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自転車泥棒|6歳の息子が見た父の責任と苦悩

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仕事が回ってきた!

職業安定所の係員が自分の名前を呼んでいる。

どうせ今日も仕事などないと諦めて道端で暇をつぶしていたが、驚いて立ち上がった。

仲間が、自分が呼ばれたことを教えてくれている。

ついに、自分に順番が回ってきた。

2年ぶりの仕事をもらったのだ!


ここは、第二次世界大戦後のイタリア、ローマ。

戦後の不況で、仕事を待ち続ける食うにも困っている失業労働者と、その家族たち。

その中の男・アントニオに、ようやく仕事が回ってきたのだった。

彼には、妻と6歳の息子、そして赤ん坊がいる。


彼がもらったのは、市役所のポスター貼りの仕事だ。

喜びを隠せないアントニオ。

ただ、この仕事には「自転車」を持っていることが条件だという。

アントニオは蒼白になった。

彼は、食べるために、自転車を質に入れてしまったのだ。

「今すぐ自転車がないのなら、この仕事は他の者にまわす」

係員はそう言った。


俺にくれ!

俺なら自転車を持っている!

男たちは口々に申し出てくる。

 

「どうするんだ?」係員はアントニオに問いただす。

「何とかします。2年ぶりの仕事なんだ」

アントニオは紹介状を持って家に帰る。

しかし、彼には、自転車を用意するあては全くなかった


この物語は、戦後の貧困にあえぐイタリアを舞台にした映画「自転車泥棒(Ladri di Biciclette)」の世界です。

ヴィットリオ・デ・シーカという、イタリア出身の名監督の作品です。

(以下、完全なネタバレを含みますので、ご了承ください)

 

 
 
 
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自転車が用意できない。

アントニオのこの悩みがいかに深刻か、想像できるでしょうか。

自転車があれば、家族が食べられるようになり、無職の苦しい生活は一変する。

ちゃんとした給与がもらえるばかりか、家族手当もついてくる。

しかし、自転車がなければ、この仕事を失ってしまう

次の仕事にありつけるまで、あと何日、何ヶ月待てばよいかわからない。

それまで、妻子を抱えてどうやって生きていけばいいのか。

絶望的な状況です。


自転車を用意するあてもなく、帰ってきたアントニオ。

「仕事をもらったのに、できない。どうにもならん。いっそ死にたいよ!」

妻・マリアにそう嘆きます。

ところが、こういうとき、女性は強いのでしょうか。

マリアは思い立つと、いきなりチェストやベッドから白いシーツを引っ張り出し、金ダライで洗い始めます。

これらは、嫁入り道具に持ってきたシーツです。

「どうする気だ?」

「これがなくても眠れるわ」

これらのシーツを質に入れて、代わりに自転車を取り戻そうというのです。

妻・マリアの決断と行動は、早いです!


かくしてアントニオは、妻の機転のおかげで、シーツと引き換えに自転車を質から取り戻しました

そして、さっそく紹介状を手に市役所をたずね、翌日から仕事をする手はずを整えたのです。

うまくいった

これで給料が入ってくる。
食べていけるんだ!
アントニオとマリアは喜びます。

「生きた心地がする」とはこのことでしょう。

 

 
 
 
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翌朝、アントニオは、支給された作業着を着て自転車を担ぎ、誇らしげに仕事に出かけます。

そして、息子のブルーノも作業着を着て、父と一緒に出かけます。

でも・・・彼はまだ6歳です。

父のように仕事をしようとでもいうのでしょうか?


6歳といえば、今の日本では幼稚園の年長組か小学校一年生です。

果たして、ブルーノはまだ未就学児(学校に入る前)で、自由な時間があるというのか。

あるいは、戦後の混乱で、学校制度も整備されていなかったのか。

そもそも、当時では6歳ぐらいの子供でも働いていたのか?

これらの時代背景は、不明です。

もっとも、当時は子供でも大人でも、働ける者は働かないと食べていけなかったのかもしれません。

ちなみに、現在の日本の労働基準法では、15歳の4月1日から働くことが可能です。

 

とにかく、この息子・ブルーノは、見た目は年相応ですが、驚くほどしっかりしています。

彼は、父とともに朝7:00ごろに出かけて、とある小屋の前に到着。

ここで父と別れます。

その小屋から、掃除道具を出しているところを見ると、何か掃除の仕事でもするようです。

職場のおじさんと、当たり前のように元気にあいさつします。

そして、夜の7:00ごろに、再び同じ場所で父と待ち合わせします。

つまり、10~12時間労働をしているのでしょうか。

「子供が労働する」という是非はともかくとして、彼は非常にたくましいのです。

 

 
 
 
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さて、父・アントニオはというと、同僚から仕事を教えてもらって、すぐに一人になり、街の壁にポスターを貼っていきます。

ハケを使って、大きなポスターをのりで貼っていくのです。

やはり、自転車は当時としては高価なのでしょう。

道行く人が、傍らに立てかけた彼の自転車を一瞥していきます。

一生懸命ポスターを貼るアントニオ。


すると、一瞬の隙を突いて、見ず知らずの若い男が彼の自転車を盗んでいきます

はしごに登って作業していたアントニオは、叫びます。

「泥棒!(un ladro!)

はしごから下り、走って追いかけます。


泥棒は、自転車を漕いで猛スピードで逃げていきます。

必死に追いかけるアントニオ。

途中、中年の男がアントニオと一緒になって、他人の車に相乗りして泥棒の行き先を示してくれます。

「あっちだ!」

しかし、追い詰めた自転車は人違いで、全く関係ない人でした。

そうしているうちに、泥棒は雑踏の中に消えてしまいました

どうも、この中年男が泥棒の若者と組んでいたようですが、パニック状態のアントニオにはそんなことまで気が回りません。


仕事を始めてすぐに、一番大事な自転車を盗まれてしまったのです。

途方に暮れるアントニオ。

その夜、そのことを知った妻・マリアはさすがに泣き出してしまいます。

 

 
 
 
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翌朝、アントニオはブルーノを連れて自転車捜しに出かけます。

朝市に並んで売り出されている自転車を見たり、あてどもなく町をさ迷ったりします。


捜索中、アントニオはとにかく自分のペースで歩き回り、右往左往します。

自転車を探す一心で、子供のペースなど気にしている余裕もありません。

しかし、ブルーノは文句一つ言わず、疲れたとも、のどが渇いたとも、お腹が減ったとも言いません。

ひたすら父を見上げては、必死について行きます。

父の焦りや苛立ち、悲しみも、心配そうにずっと見ています。

ブルーノとて子供ですから、そうして父について行くしかないのです。

 

 
 
 
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そしてあるとき、自転車を奪った泥棒らしき若者にばったり遭遇します。

アントニオと目を合わせるや、不振な挙動で立ち去ろうとする若者。

アントニオは、若者に自転車を返すよう問い詰めます。

しかし、「何のことかわからない」と否認する若者。


問い詰めているうちに、若者が住むその界隈から近所の男たちが現れて、アントニオを取り囲みます。

こいつがあんたの自転車を盗んだって?

確かなのか?

盗んだという証拠があるのか?

こっちはあんたを訴えることもできるんだぞ!

近所の男たちは、若者に加勢してアントニオを攻め立てます。

父の一大事に、ブルーノが警官を呼んできます。

そしてついに、アントニオは警官とともに、その若者の部屋を任意で捜索することになります。


古い簡素なアパートの一室に、若者とその母親を含めた家族4人が住んでいます。

その狭さ、貧しさは、アントニオの住まいよりさらに厳しいように見えます。

そして、その部屋からは、自転車も部品も何一つ出てきませんでした

警官も、これ以上捜査することはできません。

アントニオを追い返すように、非難を浴びせる近所の者たち。

果たして、その若者が犯人だったのかどうかも、もはやわかりません。


絶望が、アントニオを襲います。

さ迷う道すがら、向こうのスタジアムからサッカー試合の歓声が聞こえてきます。

絶望に沈むアントニオとは対照的な、活気ある歓声。

スタジアムの駐輪場に、数え切れない観客の自転車が停められてます。

自分はこんなにも必死に一台の自転車を探しているのに、目の前には無数の自転車がある。

呆然としているアントニオ。

 

 
 
 
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ふと、反対側の人通りのない路地裏に、ポツンと一台の自転車が置かれているのを見つけます。

自転車のそばには誰もいません。

息子のブルーノは、長時間の捜索に疲れ果てて路傍に座り込み、頭を抱えています。


アントニオは、駐輪場の自転車と路地裏の自転車を見ているうちに、ある思いにとりつかれます。

決して踏み越えてはならない、善悪を超えた思いです。


やがてスタジアムの試合が終わり、大勢の観客が出てきます。

みんなが自転車に乗り込み、家路に着きます。

道は、行き交う自転車でいっぱいになります。


路地裏には、まだ一台の自転車が置かれています。

誰も見張っていない様子です。


我を忘れるほどに、葛藤にさいなまれるアントニオ。

自分は、いったいどうしたらいいのか。

チャンスは今しかない。

本当にやるしかないのか?

 

 
 
 
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そして、ブルーノに金を渡して、路面電車で先に待ち合わせの駅まで行っているように指示します。

ブルーノは、言われたとおりに一人で電車に乗ろうとするのですが、すんでのところで乗り切れず、電車は発車してしまいます。

ブルーノは、その場に残されてしまいます。


アントニオは、路地裏の自転車にゆっくりと近づいて行きます。

まわりには誰もいません。

表通りの騒音が聞こえてくるだけです。

 

自転車に近づくと、アントニオは一気に乗り込んで走り出します。

 

「泥棒!(un ladro!)

とたんに、建物の出口から男が出てきて叫びます。

 

必死に濃いで逃げるアントニオ。

 

「捕まえてくれ!」

男が叫ぶと、通りがかった者たちがアントニオを追いかけます。

5人、10人と、見る見るうちに追っ手は増えていき、自転車に追いつきそうになります。


そして、立ち尽くすブルーノの目の前を、自転車を漕ぐ父と追っ手が走り去って行き、ついに父が逃げ切れずに捕まってしまいます

一部始終を見たブルーノは、呆然とします。


自転車から引きずり下ろされ、激しく小突かれ、攻め立てられるアントニオ。

すぐに、自転車の持ち主である中年の男がやってきて、彼を咎めます。

「この野郎、なんてことする!」

ブルーノが、泣きながら父の元に走ってきてしがみつきます。

「パパ!パパ!」

大勢からはたかれ、小突かれている父。

父にしがみつく息子。

どの警察署に連れて行くか、みんなで相談が始まります。


しかし、父と息子の様子をじっと見ていた持ち主の男は、言います。

「離してやれ」

男たちは驚き、納得がいきません。

「何だと?」

「もういいんだ。みんなありがとう」

それだけ言うと、持ち主の男は去ってしまいます。

その言葉に、男たちも不承不承解散します。

「俺なら警察に突き出してやるのに」

「神様に感謝しろよ!」

攻め立てながらアントニオを解放する男たち。


言葉もなく歩いていく、アントニオとブルーノ。

通り越していく人や車に押されながら力なく歩くアントニオは、やがて歩きながら泣き出してしまいます

泣く父の顔を見上げて、ブルーノはぎゅっと父の手を握ります

不安でいっぱいなのに、どこか父を勇気付けるまなざしを感じます。

泣きながら歩くアントニオと、手をつないで父を見守るブルーノ。

 

物語はここで終わります。

 

 
 
 
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このあと、この親子、この家族はどう過ごしていくのか。

どう生きていくのか。

問題は何も解決していません。


しかし、息子の存在が、自転車泥棒をした父を刑罰から救ってくれました。

最後の息子の優しいまなざしが、微かな希望を運んできてくれるように感じます。

父・アントニオは、また立ち上がれるのでしょうか。


息子・ブルーノは、自転車捜しを通じて、父の不安、必死、喜び、悲しみ、苛立ち、弱さ、そして責任を見てきました。

これからも見ていくでしょう。

しかし、父が自転車泥棒になったとしても、ブルーノにとっては大好きなパパです。

きっといつか、この事件がなんだったのか、わかる日が来るでしょう。

 

 
 
 
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物語を最後まで書いてしましたが、あくまでも文章ですし、記事に収めるためにストーリーのかなりの部分を割愛しています。

映画では、父と子のもっと多くの場面が描かれています。

もし観ていない方は、是非観てみてください。

 


ではまた次回!

 


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