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「洞窟オジさん」と呼ばれた男。山と人との間を行き来した43年間の壮絶サバイバル生活


少年は、1週間ほとんど寝ずに歩いた。

山に向かう線路に沿って、ひたすら歩いた。

 

空腹になると、山柿を取って食べた。

疲れ果てたら、線路のわきで何かにもたれて眠った。

学生服に通学カバンを下げ、大きなスコップを持って、歩き続けた。

 

家には絶対に戻らない。

そう決めていた。

親にも誰にも見つからないほど、遠い所に行くんだ。

 

もしつかまって家に連れ戻されたら、怒鳴りつけられ、殴られ、血が出るまで棒で叩かれる

家に戻るぐらいなら、死んだ方がましだ。


このまま線路伝いに北へ進めば、足尾銅山に通じるはずだ。

小学校で習ったことがある。

 

今は廃坑になっていて、ほとんど人がいないらしい。

そこまで行けば、きっと誰にも見つからないはずだ。

 

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時は昭和34年(1959年)。

所は群馬県の国鉄足尾線(現:わたらせ渓谷線)。

 

少年は13歳、中学1年生だった。


家を出て2日目、疲労と眠気で頭が朦朧としているとき、遠くから犬の声が聞こえた。

ん?どうも聞き覚えのある声だ・・・


振り返ると、白い犬が走って来る。

家で飼っていたシロだった。

「シロ!」


いったいどうやってここまで来たんだ?

俺の匂いを嗅いできたのか?

太いロープでつながれていたのに、まさか噛みちぎってきたのか?


家では、俺に一番なついていたシロ。

そのシロが、こんなに遠くまで俺を追いかけてきてくれた。

「シロ!俺とお前はいつも一緒だ!」


泣きながら、少年はシロと一緒に暮らそうと決めた。

 

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●「洞窟オジさん」と呼ばれた男

この少年は、加村 一馬(かむら かずま)さん。

終戦後の昭和21年(1946年)、群馬県みどり市大間々町で、8人きょうだいの4男として生まれました。

 

13歳で家を飛び出し、57歳で発見されるまでの43年間、彼は人間社会を避け、人里離れた山の洞窟などで生き抜いてきました

2004年に、彼の人生を描いた「洞窟オジさん」(小学館)がベストセラーとなり、NHKでドラマ化もされました。


いったいなぜ、彼は一人ぼっちで、自然の中で生きてきたのでしょうか。

その原点は、子供時代にありました。


彼の子供時代は、虐待やいじめの連続でした・・・

 

●加村家の日々

麦、粟、ひえなどに、さつま芋を入れて炊いたものが、一膳。

それが夕食です。

お代わりはありません。

だから、加村少年は、家でお腹一杯ご飯を食べたことはありませんでした

 

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彼の父は、農家の手伝いやかやぶき屋根の修繕などの、便利屋のような仕事をしていました。

母も、近所の繊維工場で働いていました。

 

しかし、共働きでも、8人の子供のいる加村家は、満足に食事ができないほど困窮していました。

終戦直後の貧しい農村地帯。

その中でも、特に貧しい家でした。


加村少年はいつも空腹で、ついつい、つまみ食いをしてしまいます。

きょうだいのおかずをつまみ、父が干しておいたマムシをつまみ、食べてしまいます。


見つかると父に激怒され、殴られ、体から血が出るほど棒で叩かれました。

同じように、母も許してはくれませんでした。

週に2回はつまみ食いがバレて、酷いお仕置きをされる。

その繰り返しでした。

 

強烈なのは、墓地の墓石に縛り付けられたことです。

 

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夜中に、ロープで墓石にグルグル巻きに縛り付けられ、雨の日でも風の日でも、そのまま朝まで放置されたのです。


泣いても叫んでも、親は助けに来てくれません。


ようやく朝になって許してもらい、縄をとかれるのです。

体は冷え切って麻痺し、雪の夜には頭に雪が積もったそうです。

 

子供が親に殴られるのは珍しくない時代だった当時、それでも加村家では、今なら事件になるであろうほどの折檻があったのです。

 

どうして自分ばかりが叱られるのか?

彼には全くわからず、そして納得がいきませんでした。

 


風呂は、週1回。

学校では「臭い」「汚い」と、友達から仲間外れにされました。


しかし、彼はへこたれませんでした。

馬鹿にされるのが悔しくて、大人数に向かって棒切れを持ってかかっていきました


でも、体格的にも人数でも引けを取る彼は、やられてしまいます。

彼は、いつも血だらけになっていました。

 

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こうして、学校にも家にも居場所がなかった彼は、ある朝、ついに家出を思い立ったのです。


親もきょうだいもいないときを、見計らいました。

学生かばんに、詰め込めるだけの食料と調味料を詰め、マッチやナイフ、そして大きなスコップを持ち出しました。

「二度と戻るもんか!」


そう決心して、彼は飛び出したのです。

 

 

●洞窟の暮らし

線路を歩き続けた加村少年とシロは、ついに足尾銅山に到着しました。

「シロ!ここだ。やっと着いたよ!」

銅山の採掘跡の洞窟が、たくさんありました。

 

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彼らは、さらに奥地に入り、人目につかないとある鉱山跡の洞窟を住居に決めました。


加村少年は、住居を整えました。

入口から数メートルのところに寝床を作り、風や獣の侵入を防ぐために杭を立て、木や枯草で「戸」を作りました。

鉈で材料を切り、藤のつるで縛って作りました。


火床を作り、夜は、野生動物の侵入を防ぐのと暖をとるために、火を絶やしませんでした。

 

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彼は、13歳です。

なぜここまでのサバイバル力があったのでしょうか。


それは他でもない、彼を折檻していた父のマネをしたのでした。

●少年の生命力

山菜やキノコの取り方、ヘビの食べ方、カブトムシの幼虫の食べ方。

それらは、父の行動を見て覚えました。


飢えをしのぐため、山にあるものは何でも捕り、火を通し、食べました

虫、カタツムリ、ネズミ、コウモリ、鳥、ヘビ、カエル、ウサギ、イノシシ! 鹿!!

毒キノコ以外は、何でも食べたと言います。

 

何でも食べないと、生きていけないのです。


味付けは、家から持ち出した塩と醤油でした。


飲み水の確保は、白樺の木にナイフで穴をあけてその下に竹筒を置き、溜めました。

 

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彼の獲物の捕まえ方は、卓越していました。


鳥は、木の枝で作った罠で捕まえました。

ウサギは、2つの穴から出入りしているのを発見して、片方からY字の枝を突っ込んで動けなくしておいて、もう片方の穴から捕まえました。


イノシシの捕獲は、命がけでした。

4メートル四方の穴を掘り、中に先を尖らせた3本の竹やりを立てて、自分がおとりになってイノシシを誘い出しました。

突進してくるイノシシから逃げるふりをして、罠の上を飛び越えます。

イノシシは、そのまま穴の中に落ちるという寸法です。


獣の肉をさばくのも、慣れたものでした。

内臓をとり、食べる肉と衣服や靴になる皮などを切り出して、余った肉は干して保存食にしました。


こうして加村少年とシロは、野山を駆け回り、獲物をとって暮らしました。

それは、彼にとって、とても楽しい時代でした

 

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●シロの看病

あるとき、彼は熱を出しました。

風邪なのか、体がだるくクラクラして起き上がれません。

どうにか川まで行き、布を濡らして額に当てて冷やしました。


しかし、ついに動けなくなり、バッタリと倒れてしまいました

もはや、寝て休むしかありません。


すると、シロが額の布をくわえて洞窟の奥へ走っていきました。

何をしているのか。


シロは、濡れた布をくわえて戻ってきました。

どこかで、布を冷水に浸してきたのです。

こんなことがあるのでしょうか?


地面を引きずってきたので、布は泥だらけです。


シロは、何度も布を冷水に浸しては、戻ってきました。

驚くほど利口で、心優しい犬だったようです。

そして、加村少年のことが好きだったのでしょう。


ところが、そんな毎日に、突然終わりが来ました。

 

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●親友との別れ

ある日、シロがやけに甘えてきました。

クーンクーンと、まとわりついてきます。

どうも元気がなく、力がない様子です。

「シロ、大丈夫か?どうしたんだ?」

心配して撫でてやり、干し肉をあげますが、食べようとしません。

加村少年は、ずっとシロを撫でてあげました。

 

 

翌朝、シロは冷たくなっていました。

 

 

突然の、思いもよらない出来事でした。

シロが死んでしまった?

なぜ?


彼は、とても信じられませんでした。


彼は三日三晩、シロをそのまま寝かせておきました。

何も食べずに、シロのそばにいました。

シロはただ寝ているだけで、起きるのではないかと思いたかったのです。

 

でも、シロの目が開くことはありませんでした。

彼の泣き声が、洞窟の中にいつまでも響いていました。


彼はシロを抱いて山を巡り、一面ピンク色の蘭が咲いている場所に埋めました。

でも、もう一度会いたくなり、土を掘り起こしてシロを抱きしめました。

体は硬くなっています。

そしてまた、土をかけて埋めました。

 

彼は、たった一人の親友であり家族を、失ったのです。

 

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●はじめてのご馳走

その後加村さんは、あちこちの山を移動して、狩猟や採集で命をつなぎました

20代のころには、早くも頭に白いものが混じり始めていました。

 

道沿いや駐車場で、人のまねをして、山で採った山菜や花を売ってお金を稼いだこともありました。

何万円と稼いだこともあります。


親切な夫婦との交流もありました。

あるとき、夫婦に山で声をかけられておにぎりをもらい、付き合いが始まったのです。

夫婦の家の仕事を手伝い、生まれて初めてお金をもらいました。


さらには、家に招かれて泊まらせてもらいました

 

生まれて初めての豪華な食事・・・温かい白米と味噌汁、焼いた肉、野菜のおひたし

白米は、自分の家では食べたことがありませんでした。


数年ぶりの入浴。


初めての、石鹸の匂いがするきれいな布団・・・

 

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全てが、驚きと感動の連続でした。


夫婦の前で、泣きながら食べました。

泣きながら入浴しました。

夫婦の気持ちが嬉しくて、夜は一睡もできませんでした。


しかし彼は、いつまでも世話になってはいけない、自分がずっとここにいると夫婦に迷惑がかかる、と思うようになりました。


引き止められましたが、何度も夫婦に頭を下げて、山に戻りました。

 

●山にいても人の中にいても

それからも、一人きりの狩猟採集の暮らしが続きます。

彼の頭に、ふとこんな考えがよぎりました。


俺は何をしているんだろう。

何で生きているんだろう。


山にいれば獣に怯え、人の中にいれば人の目が気になってしまう。


毎日毎日、どうやって食べていくかを考えるばかり。

シロを失ってからというもの、話しかける相手も、遊ぶ相手もいない。


いつの間にか、笑うことも忘れてしまった・・・

 

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俺には、生きる価値があるのだろうか?

これ以上生きていても、仕方ないんじゃないのか。


死にたい・・・

死んでしまおう・・・


彼は、首を吊る木を探し始めました。

そして、手ごろな木にツルをかけて首に巻き、踏み台をけってぶる下がりました。


しかし、首が締め付けられたとたん、吊っていた枝がボキっと折れ、彼は地面に落ちました。

「俺は死ぬこともできないのか!」

ゲホゲホと苦しく咳こみ、泣き叫びました。

 

●樹海での恐怖

「富士山まで行くから、ふもとの樹海に入れば死ねるよ」

とあるトラックの運転手は、死ねる場所を尋ねてきた加村さんに、気軽にそう答えました。

死にたいなんて、まさか冗談だと思ったのでしょう。


そして、トラックで富士山の近くまで乗せて行ってもらい、教えられた道を進んで樹海に入りました

 

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どれほどさまよったでしょうか。


ふと木の上を見ると、ロープが下がっています。

地面には、女もののハンドバッグや靴、ボロボロになった服があり、そのそばに骨が散乱していました。

木の陰に、頭蓋骨が転がっていました。

木に髪の毛が引っかかっていて、風に揺れています。


彼は、足がすくんで動けませんでした。

死ぬとこんな風になるのか。


いったいこの人が、どんな辛い思いをしたのだろう。

楽になろうとしてここに来たのか。

でも今は、体がバラバラになっている。

悲しくて、かわいそうで、彼は涙が止まりませんでした。

 

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さらに何度かの夜をこえ、また遺体を見つけました。

ジャンパーを着たままの、首を吊った男性。

亡くなってからまだ日が浅いようです、


凄惨な風景なのに、なぜか加村さんは目をそらせませんでした。

この人も、死ぬほどつらい目にあったのだろうか。


男性の首のロープを切り、静かに遺体を地面におろしました。

手を合わせ、また歩き始めました。


彼は、二つの遺体を見て、本当に死の恐怖を感じたそうです。

どんなに辛くても自殺なんかしちゃだめだ、と思いました。

 

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●洞窟オジさん

彼が57歳の時、ついに彼を世間に知らしめる事件が起きました。

いや、彼自身が起こしたのです。


そのころ彼は、茨城県の小貝川(こかいがわ)で魚を釣って暮らしていたのですが、ある時期大雨で川の水が濁ってしまい、魚が獲れなくなってしまいました

つまり、食糧がなくなったのです。


所持金は370円
、食べつなぐことはできません。

その辺では顔を知られているため、スーパーのごみ箱を漁ることもできませんでした。

 

ふと彼は、近所の工場地帯の自動販売機のことを思い出しました。

 

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自動販売機の商品の補充作業を見たとき、小銭がたくさん入った箱があるのに気づいたのです。

良からぬ考えが、頭を占めました。


彼はバールを持って行き、自動販売機をこじ開けようとしました。

その時・・・

「コラー!」

警備員に見つかってしまい、力づくで取り押さえられ、警官に引き渡されました。


そして、警察の取り調べで、彼の43年間にわたるサバイバル生活が明らかにされました。

 

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驚いたのは、取り調べをしていた警察官だけではありません。

メディアが取り上げ、彼の存在が世に知られることとなったのです。

彼の人生を綴った書籍「洞窟オジさん」も出版され、 彼は注目を浴びました。


しかし彼は、やがて宿無しの生活に戻っていきました。

 

●子供たちに伝えたい

さらに後年後、彼はある自立支援施設の一角に住んでいました。

彼を心配する人が、彼が住めるところを探してくれたのです。

少しでも彼が馴染みやすいようにと、かつてシロと一緒に住んでいた足尾銅山の近くの施設を探してくれました。

 

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その施設でも、やはり人間関係の摩擦があったり、紹介された現場作業の仕事先で嫌がらせにあったりもしました。

ただそれは、人間社会である限り避けられないものだったでしょう。

何度も嫌になって山に逃げようとしましたが、施設職員の助けもあり、何とか乗り越えました。


現在彼は、施設の建物を修繕する仕事を任され、そして、子供たちの野外活動で様々なサバイバル術を教えているそうです。

子供たちにサバイバル術を教える!


実は、彼がずっと考えてきたことでした。

子供たちに生きる術を教えたい」という思いを、彼はいつからか抱いていたのです。


まさに、それが実現できる仕事でした。

 

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彼は、嬉しそうに言います。

「竹から弓矢を作って実際に矢を放つと、子どもたちの目つきが変わるんだ。

その表情を見るだけで、こっちがうれしくなる」


施設職員の女性は、彼についてこう語ります。

「彼は険しい目つきで人を寄せ付けない 、人間不信の塊みたいな人だった。

でも、施設での生活を通じて、ものすごく柔和な目に変わりました


どうやら彼は、人の社会の中に居場所を見つけたようです。

しかし、そこまでの道のりは、決して楽なものではありませんでした。

 

●天国のシロへ

加村さんは語ります。


振り返ると、一番の思い出はシロと暮らした洞窟生活だった。

シロと一緒にイノシシやウサギを追いかけたことは、つい最近のことのようだ。


俺が強くなれたのは、勇敢なシロのおかげだった。

 

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でも今は、様々な人の世話になって、心の温かさを感じて生きている。

人のためにも自分のためにも、一生懸命仕事をしてみるよ。

シロ、お前に会いに行くのは、しばらくお預けになりそうだ。

 

 

ではまた!

 

(当記事の内容の一部は、以下のページより引用・抜粋・ 加工しています。
「洞窟オジさん」(小学館)上毛新聞社サイト

 

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「哲ちゃん」という名の強盗。ある日突然あなたの記憶が途切れたら?

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年のころ、60歳前後であろうか。


男は、その中華料理屋に一人でやって来た。

中華丼や唐揚げを食べて、ビールと焼酎を飲んだ。

飲み終わると、彼は立ち上がり、突然ナイフを出した

 

「おい」

 

店主を威嚇した。

レジの横の箱を奪い、中華料理屋を出た。


しかし、奪った箱の中に入っていたのは、売上伝票ばかりだった。

 

男は、近くの百貨店のトイレに駆け込み、バッグの中から刃物を出した。

そして、自分の腹に突き刺した


腰に巻いたコルセットに、血が滲み出た。

彼は、気を失った。

 

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体調が回復すると、男は、京都府警に逮捕された。

時は、2010年。

ここは、京都府の日本海沿いの小さな町。


取り調べをするうちに、彼の特殊な状況が明らかになってきた。

彼は、運転免許証など、身分を証明するものを何一つ持っていない。


それどころか、自分の名前も、確かな年齢もわからなかったのだ。

 

彼は、生まれてから20代後半までの間の記憶が、すっぽり抜けていた

残っているのは、20代後半から現在までの30余年間の記憶だけ。

仮に彼が60歳だとすると、人生の前半の記憶がそっくり失われていた

 

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彼には、家族も知り合いもなかった。

30年以上の間、ひとり日本各地を転々として、工事現場の宿などで暮らしてきた


かろうじて残っていた、子供のころの記憶。

彼のことを「哲ちゃん」と呼ぶ友だちがいた。

 

工事現場の手配師にその思い出のことを伝えると、それ以来、彼は「てつ」と呼ばれるようになった。


彼の、唯一の名前だった。

 

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●人の記憶の始まり

人の記憶は、いつごろから始まるのでしょうか。


赤ちゃんのころのことは覚えていない、とよく言われます。

ドイツの心理学者トルステンによると、人の記憶が残るのは、早くて3歳のころからだそうです。


もちろん、個人差はあるでしょう。

また、ある時から急に記憶が発生するわけではなく、いろいろな経験を積んで、少しずつ記憶していくようです。

 

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発育中の幼児の脳の中では、激しい変化が起こっているようです。


新しい脳細胞が加わると、記憶を読み出すスキームが新しいものに置き換えられてしまう

そのため、古い方法でアクセスしていた記憶、つまり、それ以前の記憶は読み出せなくなってしまう、というのです。


例えるなら、パソコンOSの大きなアップデートによって、古いデータにアクセスできなくなる、というところでしょうか。

カナダの神経科学者フランクランドの研究です。

 

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こうしたことから、幼児の脳では記憶が残りにくく、そして記憶が取り出しにくい、と考えられているようです。


一方、成人した後でも、何らかのきっかけで、突然記憶が記憶が失われることがあります。

中華料理屋で強盗をした「哲ちゃん」も、その一人です。


「哲ちゃん」は、なぜ強盗をしたのでしょうか。

 

●生きるための人脈

工事現場で働いてきた「哲ちゃん」は、ある懇意にしている手配師に、いつも仕事をあっせんしてもらっていました。

その手配師は、自分の名前も思い出せない「哲ちゃん」の代わりに、現場の手続きを「偽名」で済ませてくれていたのです。


30年もの間、彼は「哲ちゃん」の仕事を世話してくれていました。


ところが最近になって、その手配師が突然姿を消してしまったのです。

病気になったのか、仕事を辞めたのか、あるいは亡くなったのか、理由はわかりません。

とにかく「哲ちゃん」は、仕事が得られなくなりました

 

他に頼る人もなく、「哲ちゃん」は日々の生活に困るようになりました。

食い詰め、やがて無銭飲食をし、強盗を働いたのです。


彼は、絶望していました。

そして、百貨店のトイレで自殺を図ったのです。

 

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●破壊された記憶

警察の取調べ室で、彼は初めて「自分の過去」と向き合いました。


住民票も健康保険も持たず生きてきた彼には、自分を証明するものは何もありません。

指紋をとって前科者と照合しても、該当者は出てきません。

彼の身元を確かめるためには、彼自身が昔の記憶を取り戻すほかなかったのです。


「哲ちゃん」が記憶喪失になったきっかけは、26~27歳のころでした。

工事現場で、人生を左右する事故に遭ったのです。

 

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数メートル上にクレーンで吊るされていた分厚い鉄板が、彼の上に落ちてきました。

鉄板は彼を直撃し、安全ヘルメットとともに彼の頭蓋骨を割りました

左足を粉砕骨折し、内臓を損傷し、彼は記憶障害に陥りました。

それまでの記憶が、ほとんど失われてしまったのです。

 

取り調べで、彼はようやくある地名を思い出しました。


「かがわ」「たどつ」


香川県多度津町(たどつちょう)のことです。

彼は、その地に住んでいたのです。


彼の両親は、彼が幼いころに亡くなり、その後、漁業を営む親類の夫婦に育てられました。

 

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捜査員は、彼の描いた地図を頼りに、多度津町付近を捜索しました。

多度津町に、まだ彼を知る者がいるかもしれない。

彼の身元が確認できるかもしれない。


しかし、手がかりは何も得られませんでした

 

●「哲ちゃん」の心の中

本名が不明のまま、「哲ちゃん」という通り名で公判が進み、彼は実刑判決を受けました。

3年の刑期でした。

刑期を終えると、刑務官の勧めに従って、彼は「就籍」の手続きを行いました。


「就籍(しゅうせき)」とは、無籍者(戸籍のない人)が、届け出をして戸籍につくことです。

 

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苗字は、自分で「津和野(つわの)」と決めました。


ある時期、彼が働いていたことがあった島根県津和野町

その津和野町の城下町が好きで、その名に決めたのです。


事故に遭った27歳のころ、入院先の看護婦さんや会社の人たちは、彼の境遇を気の毒に思っていました。

しかし、彼自身はそう思ってはいなかったのです。

 

「俺はそういう人間なんだ」

ただ、そう思っていました。

 

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記憶を失ってから30年以上の間、彼は行政に頼ることもなく、工事現場を渡り歩く人生を送ってきました。

そして現在、「津和野さん」は、京都市内のアパートで1人暮らしをしているそうです。


足が不自由で、心臓の持病を抱えている。

病院に行く以外は、ほとんど人と会う機会もない。

そんな状況であっても、彼は思ったそうです。


「普通の生活が、やっと持てたんじゃないかな」


彼の本当の素性は、誰にもわかりません。

彼自身にもです。


ただこの話を知ると、彼が、不器用ながらも実直で、ひたむきに生きてきた人であるらしいことを、感じずにはいられません。

 

本来、それ以上必要なものがあるのでしょうか?


●突然我に返った男

もうひとつ、突然の「始まり」を体験した人の話があります。


2016年。

Sさん(男性)は、激しい頭痛と吐き気を感じて、我に返りました


そこは、公園でした。

 

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しかし、どこの公園なのか、なぜ自分がそこにいるのか、わかりません。

いやそれどころか、自分が誰なのか、全くわからないのです。


自分の名前、年齢、住所、家族を、覚えていない。

ここに来るまでの一切の記憶がない。

自分を知る手掛かりになるものを、何も身につけていない。


激しい頭痛の中、何度か嘔吐して、やがて落ち着いてくると、

どうにか動けるようになりました。


近くにあった地図の看板に、東京都内の「A区」という表示がありました。

「ここは、A区なのか・・・」

Sさんは、地図にある区役所に行ってみました。

 

●自分が嘘をついているみたいだ

区役所で、Sさんは自分が記憶を失くしたことを伝えました。

非常に驚かれはしたものの、彼は生活相談の係に案内されました。


吐き気も収まったため、とにかく、まずどこかで落ち着きたい


彼は、とある援助組織のシェルター(無料宿泊所)に泊まりました。

特定非営利活動法人SSSという、住まいや生活に困っている人を助ける組織の施設でした。


果たして、自分は事故に遭ったのだろうか?

何かの事件に巻き込まれでもしたのか?

 

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しかし、体に目立った傷はなく、事件らしき形跡もなく大学病院の脳外科で精密検査を受けても異常は見つからない

自分の顔写真を元に、警察に尋ね人や犯罪歴のある人と照合してもらったが、誰も該当しない。


あらゆる調査をしても、何も手がかりがないのです。


きっと、自分には親や身内がいるはずだ。

でも、その人たちは今どこにいて、何をしているのだろう。

自分のことを捜してはいないのだろうか?

 

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調査のあらゆる質問に対して、Sさんは「わからない」としか答えられませんでした。

彼は、そのとき思いました。


「自分は本当のことを言っているのに、真実味がない」

話せば話すほど、まるで自分が嘘をついているようだ


そして、一種の罪悪感すら感じてきた、と言います。


「自分は何をしたらいいのか、何のために生きているのか、わからない

Sさんは、強い無気力に襲われました。

 

●社会の一員になるということ

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「もし警察に職務質問されたらどうしよう」

Sさんは、そうした不安にさいなまれる日々を送っていました。


とにかく、本人を証明するものがないと、社会生活は望めない


彼は、施設の人とともに、法テラス(日本司法支援センター)へ行きました。

そして、戸籍につく手続きである「就籍」を申請したのです。


戸籍の内容はこうです。

自分の両親・・・不明。

氏名・・・自分で決めたもの。

誕生日・・・記憶を失ったことが分かった日。

年齢・・・自分のだいたいの見た目の年(30代前半)。

 

戸籍ができて、ようやく不安な気持ちから解放されました。

そのとき彼は、「人並みになれた」と感じたそうです。


Sさんは現在、清掃業のアルバイトをして、自力で生活しているそうです。


Sさんが一つだけ取り戻した記憶があります。

それは、神奈川県・江の島の花火大会の風景でした。

実際に江ノ島に行ったとき、その場所を覚えていたのです。

 

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それからというもの、彼はあちこちに出向いて、以前の自分の手掛かりになるものを探しているそうです。

例えば、昔のマンガやテレビ番組などを見て、自分の記憶につながるものがないかどうか、調べているのです。

●自分を成り立たせる記憶

Sさんが今一番重要だと思うのは、「信じられる人を見つけられるかどうか」だそうです。


腹を割って話し合える相手がいるかどうか。

信頼し合える相手ができるかどうか。


にわかには信じてもらえないような体験をしたからこそ、心を打ち明けられる人との出会いを、強く望んでいるようです。

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もし我々が、記憶を失い、名前を失い、そして身内や友人との関係を忘れてしまったら、いったいどうなるのでしょうか?


何を頼りに生きていくのか。

果たしてそこから、人生を始めることができるのか。

何をもって「自分」であると感じることができるのか。

これから、何のために生きるのか。


その不安や混乱は、容易には想像できません。

 

「津和野さん」や「Sさん」の境遇は、我々の意識が何によって支えられているのか、そのことに気付かせてくれるように思えます。


楽しい思い出も、つらい思い出も

たとえ思い出したくない過去があったとしても

それらは、自分の辿ってきた軌跡なのです。


「記憶」とは、我々が思う以上に

我々を形作り、
我々の足を地につけてくれているもの

なのかもしれませんね。

 

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ではまた!


(当記事の内容の一部は、以下のページより引用・抜粋・ 加工しています。
朝日新聞デジタルサイト特定非営利活動法人エス・エス・エスサイトGIGAZINEサイト)

 

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「無意識」があなたの未来を作る。潜在意識の驚くべき力。

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2004年、アメリカで、驚くべき調査結果が報告されました。

「婚姻の記録」についての調査です。

婚姻といっても、世帯調査や人口調査、あるいは離婚率の調査などではありません。


テーマは「人の心」、心理学の調査です。


調査の主催者は、心理学者のジョン・ジョーンズ。

彼は、アメリカのジョージア州ウォーカー郡とフロリダ州リバティ郡の、実に15,000件の「婚姻の公記録」を調べました。


その結果

名前の最初の文字(イニシャル)が自分と同じ人」同士のカップルが、偶然の一致にしては多過ぎる、ということがわかったのです。


例えば
ジョエル(Joel)という男性が、ジェニー(Jenny)という女性と結婚した。
アレックス(Alex)という男性が、エイミー(Amy)という女性と一緒になった。
ドニー(Donnie)が、デージー(Daisy)とゴールインした・・・


こういった具合です。

 

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しかし、生涯を過ごそうという相手が、そして人生の重要な決定が、まさか「名前の最初の文字」に影響されるのでしょうか?


そんなことは偶然に違いない」と思う人も多いでしょう。


しかし、調査結果はそうではなく、明らかな傾向を示していたのです。

 


また、別の調査結果です。


心理学者のブレット・ペラムは、やはり公記録を徹底的に調べ上げた結果、

「誕生日と住所」が関連しているということを発見したのです。

 

いったい、どういうことでしょうか。

 

例えば、誕生日が2月2日の人が、ツインレイクス(Twin Lakes)のような、数字の「2」に関係がある名前の都市に引っ越す可能性が、異常に高かったのです。


3月3日に生まれた人が、スリー・フォークス(Three Forks)のような名前の場所にいる。


6月6日生まれの人が、シックス・マイル(Six Mile)のような場所に住む。

 

こうした割合が、統計的に「多過ぎた」のです。

これらの調査結果は、いったい何を示すのでしょうか?

 

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●イニシャルと居住地

結婚相手のイニシャルも、誕生日と居住地も、本人たちが「意識」して合わせているわけではないでしょう。


特別な理由がない限り、結婚相手をイニシャルでは決めないでしょうし、

居住地は、誕生日と地名との関連ではなく、建物や環境、賃貸・購入価格などで決めるでしょう。

つまり、不思議な関連性を示した多くの人は、「無意識」にそうしている、と考えるしかありません。



「これには、人の潜在意識が関わっている」


アメリカ・スタンフォード大学の神経科学者デイヴィッド・イーグルマンは、そう説きます。

今回は、イーグルマンの著書「あなたの知らない脳 意識は傍観者である」を中心に、「潜在意識」の世界を覗いてみましょう。



●自分が知らない自分

潜在意識」とは、自覚されない意識のことです。

普段の「意識」がアクセスできない領域だと言われています。


「潜在意識」には、はかり知れない膨大な情報が蓄積されているようです。

例えば、これまでの何世代にもわたる進化の過程や、自分の生涯の経験などです。


我々の表面に現れる「意識」はごく一部のもので、実は、脳のほとんどが「潜在意識の領域」だと言われています。

 

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デイヴィッド・イーグルマンは、こう言います。


我々が普段見聞きするもの、やること、考えること、信じること」のほとんどが、「無意識の活動によるものだ、と。


冒頭の「結婚相手」や「居住地」の調査結果は、潜在意識の「傾向」を表していると言います。

その「傾向」とは、人が「他人に映る自分を愛する」という傾向です。


自分と同じイニシャルや、自分の誕生日を連想させる地名は、無意識に「自分自身を連想させる」のです。

 

●「潜在意識」がする仕事

「無意識の領域」は、実に多くの大事な仕事をするようです。


息をしたり、食べたり、排泄したりする。

こうした、意識しなくても行う機能から始まって、一連の複雑な動作を脳に焼き付けることもします。


例えば、苦労して自転車の乗り方を覚えたら、次からは、意識しなくてもあたり前のように乗れるようになった。

最初は、まず右足を上げて、サドルの上で重心を真ん中に寄せて、倒れないように漕ぎ続けて・・・と苦労していたが、

「無意識の領域」は、それらの複雑な動作を整理して記憶し、「意識しなくても自動的に行える」ようにする。

 

よりエネルギーを使わずに、効率的に行えるように、脳に焼き付けるのです。

 

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または、人が判断するときの例です。


人が何かを決めるとき、「意識の7秒前に脳が判断している」という調査報告があります。


意識が動くはるか前に、「無意識」が膨大な検証をして判断の下準備を終えている、というのです。

つまり、意識的に決断するときには、自分の中での判断はとっくに済んでいる、ということです。


もちろん、我々は「無意識」のしている大仕事には気づきません。

「無意識」は、ただ黙々と裏方仕事をしているのです。

 


あるいは、スポーツの例です。


野球の速球を打つには、「意識的な」反応スピードでは動作が間に合わない、と言われています。

目でボールを確認して情報を脳に送り、バットを振るために筋肉を収縮させる。

ここまでの時間を「意識」を通して行っていては、速球は打てないのです。

それでも、優秀なバッターは剛速球を打ち返します。


つまり彼らは、「意識」以上のスピードで反応して打っている、ということになります。

 

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「無意識」は、さらに神レベルの仕事を行います。

 

●ヒヨコと戦闘機

驚くべき「潜在意識」の力の例が、2つあります。

 

1つ目は、日本の「ヒヨコの雌雄鑑別(しゆうかんべつ)師」の技。


養鶏業者では、鶏のヒナが生まれると、そのヒナをオスとメス(雌雄)に分ける作業をします。

卵を産むようになるメスとそうでないオスを、選り分けるのです。


ところが、ヒヨコの「性差」は非常に少なく、この見分け作業は非常に難しいそうです。

 

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さて、世界で最優秀のヒヨコ雌雄鑑別師(chicken sexer)は、日本で訓練を受けてきたという歴史があるそうです。


日本人が1930年代に「肛門鑑別法」と呼ばれる手法を開発して、その熟練者がいたためです。


ヒヨコのおしり(肛門があるところ)を見てオスとメスを判別する手法で、高度に熟練した技です。


ところが不思議なのは、この雌雄鑑別師は、自分がどうやってヒヨコを見分けるているのか正確に説明できないことです。


習得現場の様子はこうです。


生徒がヒヨコを手に取り、おしりを検査して、オスかメスのどちらかの箱に入れる。

そばに立っている指導者が、「OK」か「NG」を伝える。

何週間もこの実習を繰り返して、生徒はようやく識別ができるようになる。


しかし、熟練者たちは、自分がどうやって見分けているのかを明確に言葉にできないのです。

 


2つ目は、イギリスの対空監視員の例。


第二次世界大戦中、爆撃の脅威にさらされていたイギリスは、戦闘機を瞬時に見分ける必要に迫られていました。


今飛んで来るのが、爆撃にやって来たドイツ機なのか帰還したイギリス機なのかを、判別するのです。


何人かの優秀な監視員がそれを見分けていましたが、軍はそうした熟練者をもっと増やそうとしました。


しかし、対空監視員たちは、自分たちがどうやって選別しているのか、正確に説明できないのです。

 

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ここでも、次のような習得の光景が繰り広げられました。


新人が推測した結果に対して、ベテランが「イエス」か「 ノー」 と言う。

このフィードバックを、繰り返す。


こうして、習得者は戦闘機を見分けることができるようになったのです。


ヒヨコの例も戦闘機の例も、熟練者が自身の技を意識できず、説明もできない


「意識」を超えた力、と言うべきでしょう。

 

 

●「無意識」はどこへ向かうのか

「無意識」は、我々の生命を守り、混乱することなく生きていくために機能しているようです。

しかし同時に、我々の未来にとっての「障害」にもなりえるのです。

いったい、どういうことでしょうか。


その理由は、「潜在意識」の強さにあります。

「潜在意識」の影響はあまりにも強力で、止めたり変えようとしない限り、コントロールできないのです。


それは、こういうことです。

 

自分が好きになる相手、美しいと感じる対象、他人との関わり方、全てを「無意識の自分」が決めている

これまでの経験や記憶をもとに「無意識」が判断し、行動に移している、と言うのです。


「無意識の自分」は、強力に「自分」を管理しています。

そして、ストップをかけない限りそれを繰り返そうとするのです。

 

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あなたはおそらく、こう思うでしょう。


自分は、自分で考えて行動していると思ってきたが、そうではなかったのか?

全てがあらかじめ決められているのなら、そもそも「自由な意識」など存在しないのか?

これからもずっと、自分は「潜在意識」に管理されるのか?

 

 

答えは「ノー」です。

 

 

人の意思決定とは、やはり「意識」が行うものです。

「意識」こそが、未来を描くのです。

必要なのは「無意識」を超えるほどの「強い決定」だ、とイーグルマンは説きます。


「これが好きだ」「こうしたい」という、新たな強い指令を出す。

このことが必要だ、と言うのです。


自分に対して「明確な意図」を発しないと、

いつまでたっても、過去をもとにして作られた未来しかやってこない。


彼はそう説くのです。

 

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●自分を運営するCEO

「意識」は、あたかも「自分」という会社の「最高経営責任者(CEO)」のようです。


普段の雑多なこと、あれこれ複雑なことは、社員である「無意識」の判断と行動に任せておきます。

実に、忠実で有能な社員です。


そして、ここぞというときにCEO(意識)が要望や長期計画を立て、社員(肉体や無意識)にそれを実行してもらうのです。

 

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結局のところ、人は自分が進もうと思っている方向にしか進みません。

「自分自身が今どこに向かっているのか」

「何を優先しようとしているのか」

これを知ることが大切だ、とイーグルマンは言います。


そして、もし自分が「意識」とは違う方向に進んでいるのであれば、強い意志でそれを「修正」することです。

 

これからどんな未来設定をしていくのか、「意識」というCEOに選択の自由と責任があるのでしょう。

そして、CEOが落ち着いてその決断ができるように、「無意識」は、ほとんどの膨大な仕事を担ってくれているのです。

 

 

ではまた!


(当記事の内容の一部は、以下のページより引用・抜粋・加工しています。
デイヴィッド イーグルマンあなたの知らない脳 意識は傍観者である
「引き寄せの法則虎の巻」サイトWEDGE Infinity(ウェッジ)サイトWIREDサイト

 

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人は走りながら進化した。体の動きが心を作る。

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一匹のガゼルが、サバンナを歩いている。

 

ケガをしたのか、右の腰に生々しい傷口がある。

ときおり右足を宙に浮かせ、痛みをかばっている。

 

真上から照りつける太陽。

乾いた茶色の大地。

 

遥か後方からガゼルを追う、3つの影

 

ホモ・エレクトス

太古のヒトだ。

 

長い槍を持ち、ガゼルの足跡を追跡している。

 

ここは、180万年前のアフリカ大陸

 

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やがて、遥か前方にガゼルを見つけた。


走り出す3人。

逃げるガゼル。

獣とヒトの、荒い息と乾いた足音だけが聞こえる。


やがて、力尽きてしまったのか、逃げるのを諦めたのか、

ガゼルのスピードが落ちてくる。

追いついて、慎重にガゼルを取り囲む、3人。


そして一気に走り寄り、次々と3本の槍でとどめを刺した。

 


これは、太古のヒトが行っていた「狩り」の場面です。

 


彼らは、草食動物を標的にして、追い続け、走り続けました。

そして、獲物が力尽きて動けなくなったところを倒したのです。

 

彼らはこうして、肉を食べることができました。

この肉の栄養で、脳が発達してきたと考えられています。

 

しかし、野生動物が疲れて動けなくなるとは、相当なことです。

いったい彼らは、どれほどの距離を走ったのでしょうか。


研究では、太古のヒトは、1日に50~100㎞もの距離を走っていたそうです。

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●生きるための「走り」

180万年前。

我々の祖先は、常に絶滅の危機にさらされていました。

 

鋭い牙も持たず、瞬時に追いつく足の速さもない。

厳しい生存競争の中で生き残るのは、至難の業でした。


彼らは、どうやって飢えをしのいだのか。

草木や実を食べたのか、昆虫を食べたのか。

それだけでは、とても栄養が足りなかったでしょう。


だから、肉を狙ったのです。


しかし、俊敏な動物を、ただでは捕まえられない。

獲物が疲れるまで何十キロという距離を追い続けて、仕留めたのです。

生きるためとはいえ、驚異の体力です。

 

しかし、驚くべきことがもう一つあります。

 

狩りの後、どうやって元の住み家まで戻って来れたのでしょうか?

 

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見知らぬ山や谷、森、荒野を、何十キロも移動したのです。

地図もコンパスもない太古の時代に、帰り道など覚えていられないでしょう。

いったいどうやって、家族や仲間のもとへ帰ったのか?


実はこの秘密は、「走ること」にあったのです。

 

●脳の秘密

BDNF」という物質を、聞いたことがあるでしょうか。

Brain-Derived Neurotrophic Factorの略で、「脳由来神経栄養因子」と呼ばれています。


人が運動をしたときに脳内で分泌される物質ですが、このBDNFが「脳の発達を促す」ということが、近年わかってきました。

 

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pixabay


例えば、早歩きで1年間ウォーキングを続けたところ、脳の海馬(記憶や空間学習能力に関わる器官)が大きくなった、という報告があります。


特に有酸素運動が、脳を活性化させたり拡張させ、認知症を予防するという効果も報告されています。

 

太古のハンターたちは、いつも走っていました。

そして、脳が刺激されていました

 

その活性化した脳で場所の特徴や危険なエリアを記憶し、帰りに思い出しながら元の住み家へ戻って来た、というわけです。


走ることで、ヒトの頭脳は進化した。


「走ること」は、生きること
だったのです。

 

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ところで、運動の効果は脳の発達だけにとどまりません。


人が持つ「感情」「やる気」「安定感」「自己肯定感」。

こうしたメンタル面は、精神からだけではなく、「運動」にも影響されているのです。

 

●体が心を作る

ストレスが溜まっているとき、気持ちが沈んでいるとき、時間が癒してくれるのを待つだけではなく、ほんの一歩動いてみる

 

これだけで、心が晴れることがあります。

 

これは単に「気のせい」ではなく、人がもともと持っている「性質」でもあるのです。

 

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脳から麻薬が出る

 

ご存じの方もいるでしょう。

運動すること、走ることで、脳は気持ちよくなる物質を出すのです。

 

いったい、どんなものかというと、

例えば、走ることで「セロトニン」というホルモンが分泌されます。


セロトニンは、「精神安定剤」とよく似た分子構造をしており、精神・感情のコントロール、安心感、直観力を上げる効果があります。

さらに、消化や排便、体温などの調節にも関わっているようです。

 

セロトニンが不足すると、睡眠やメンタルヘルスに不調をきたすと言われています。

 

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また、「エンドルフィン」という物質。


これは、有酸素運動などで負荷がかかった状態が一定時間続くと、分泌されます。

エンドルフィンはずばり「脳内麻薬」とも呼ばれ、モルヒネと同じような作用をして快感や陶酔感を与えるのです。

 

「運動」が精神を安定させる。

つまり、「体の動き」が「心」を作っているのです。

 

活動を潤滑に進めるために、あるいは痛みを一時的に忘れさせるために、人にはこうした機能があるのかもしれません。

さらに、こう言えるでしょう。


「やる気が出る」から動くのではなく、「動く」からやる気が出る。

 

動くからこそ、気持ちよくなり、精神が安定し、意欲がわいてくる。

人の心は、自分が思っているよりもずっと、体に影響されているのです。



●「便利」が人を弱らせる

現代人は、運動をしなくなりました。


車や電車、エレベーター、エスカレーターでの移動。

職場でも家でも、スマートフォンやパソコンに向かって、1日中座り姿勢。


こうした根本的な運動不足に加えて、今や、コロナ禍の自粛生活やテレワークです。


長時間の座りっぱなし」は、肥満、糖尿病、心血管疾患、脳卒中、がん、認知症のリスクを高める、と言われて久しいです。

 

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アメリカのボストン大学などの研究チームは、すでに5年前にこう警告していました。


40歳の時に運動不足の生活を送っている人は、20年後に脳が早く老化する

つまり、40歳のときの運動不足を放置しておくと、60歳になったときに脳が早く衰えてしまう、というのです。


実際に、運動能力が低かったグループは「脳の容量が減少していた」そうです!


脳が「退化」するのです。

 

●今何ができるのか

こうした話を聞いて、あなたは「まずい!」と思ったでしょうか。


しかし、同時にこう思うかもしれません。

「運動不足が悪いことは重々わかっているけど、忙しい毎日の中では、運動の時間はなかなかとれないよ

「だいたい、きつい運動なんて続きやしない!」


そんな人は多いでしょう。

僕もそうです (^^;)


しかし、心身を整えるのには、何も「きついトレーニング」が必要ということではないようです。

極端なことを言えば、5分か10分でも運動すれば、脳にはそれなりの刺激が伝わるそうです。

 

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お勧めは、例えば一日20分程度の「早歩き」

つまり、ウォーキングです。


「連続20分」でなくても、何回かに分けて「一日の合計が20分」になればOKだそうです。


これなら、できそうですよね?


脳が活性化すれば、当然仕事の効率は上がり、生活にも活気が出てくるでしょう。

新たな発想やアイデアが、出てくるかもしれません。



そして何より、「気持ちが安定すること」が大きいでしょう。



少し体を動かすことで、思い悩んでいたことが、何でもないことのように思えてきた。

ガチガチだった視野が、少し広くなった。

 

こんなことが起きたとしたら、非常に大きな変化です。

 

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そして、10年後、20年後には、運動不足のままで過ごしてきた場合に比べて、格段に心身の調子がよくなっているに違いありません。

「脳の縮小」を防ぎたいのなら、それぐらいはしたいですよね (^^;)

 

何もしないと、人はやがて退化し、老いる一方です。


ウォーキングの理想は、「」の時間帯に行うことだそうです。

しかし、朝の時間帯が難しいという人は、通勤時間、隙間時間などでもOKです。

帰宅時に一駅余計に歩くのもよいし、テレワークが多ければ、ちょっと近所を散歩するのもよいでしょう。


1~2週間でも続けたら効果を実感できると言われています。

ちょっとやってみたくなりますよね。

 

●夜明けの小さな旅

ある、夜明け前の風景です。

 

まだ暗い時間帯。

目覚ましが鳴る直前に、うっすらと目が覚める。

「もうちょっと寝ていたいな・・・」


しかし、心の迷いとは裏腹に、じんわりと体に緊張感がみなぎってくる。

 

トイレに行き、着替えて、軽いストレッチをする。

シューズを履き、あくびをしながら外に出ると、近所の家々はまだ寝ている。


そして、ゆっくりと走り始める

 

深い木々のエリアに入っていくと、鳥の声、風の音、土と木のにおいに包まれて、

五感が目を覚ます。

 

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これは、僕の朝の風景です。

早朝にジョギングをしています。


普段、座りっぱなしのデスクワークで、教科書に載るような典型的な運動不足の生活なのです (^^;) 

そうした状態が何年も続いて、心身ともに循環が滞り、不調の限界に達しました。

 

そこでジョギングを始めてみると、格段に体の調子が良くなったのです。

 

最初は、ほんの50メートルで倒れそうでしたが (^^;) 、続けていると少しずつ走れるようになり、

1年半経った今は、走らない日は心身の調子が整わないと感じるほど、生活に定着しました。

 

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早朝のジョギングでは、気象の変化、季節のめぐり、太陽の動きを感じます。

木や虫や鳥が、地球のリズムの中で生きていることがわかります。

そして、走っている間は自分もそのリズムに参加しています。


もはや運動するだけにとどまらず、

自然へのチューニングタイムになっているのです。


デスクワークを続けるためにも、気持ちを整えるためにも、なくてはならない時間になりました。

 

 

ではまた!

 


(当記事の内容の一部は、以下のページより引用・抜粋・ 加工しています。

ダイヤモンド・オンライン パラサポWEB NHKスペシャル

 

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異星人が問う人類の責任。地球の静止する日は来るのか。

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宇宙開発競争が激化しています。


旧ソ連、アメリカについで、ついに中国も火星に探査機を着陸させました。

それ以外にも、6つの国と地域が火星に乗り出しています。



先に行った者勝ち、やった者勝ち。

各国が宇宙強国になろうとして、数千万kmの彼方に向かって我先にと、しのぎを削っています。



人がどんどん宇宙へ乗り出す一方で、信じがたい警告があります。

故ホーキング博士は、こう言っていました。

 

 
宇宙人と接触しないように

 

人類がまだ発展段階の今、地球に宇宙人が来ると、人類にとって良い結果をもたらさないかもしれない

 

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ハーバード大学のエイブラハム・ローブ教授も、2021年5月に次のような声明を発表しました。


地球外生命体との平和条約を結ばなければ、

人類は6,600万年前に絶滅した恐竜と同じ運命をたどる

 

 

なんということか・・・

 

 
地球外生命体(E.T.)との接触で、人類は滅亡してしまうだから、彼らと和平を結ばなければ生き延びられない、

と言っているのです。

 

 両者のメッセージはいずれも、人類が異星の存在に対して無力であると警告しています。

 

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今から70年前


人類が、宇宙では全く未熟な存在である
ことを思い知らされる事件が起きました。

 

 第2次世界大戦後の1951年

 地球の上空60kmを、時速6,400kmというスピードで飛行する物体が探知されました。

 

明らかに地球のものではありません。

 

 それは北大西洋上空からアメリカ東岸へ移動し、轟音を発しながら、首都ワシントンで地上に下りてきました


人々は、パニックになって逃げ惑いました。

警察と軍が出動して周囲を囲みます。

 

やがて、その銀色の円盤状の物体から、奇妙な服と丸いマスクをかぶった生命体が現れました。

 


その生命体は「英語で」こう言ったのです。

我々は、平和のために善意を持ってきた


 

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●地球の静止する日

もちろん、これはフィクションです。

ワシントンD.C.に、異星人が降り立ったことはありません(たぶん・・・)。


1951年のアメリカのSF映画の古典

地球の静止する日(The Day the Earth Stood Still)」の世界です。


監督は、後に「ウエスト・サイド物語」や「サウンド・オブ・ミュージック」などを手掛ける、名匠ロバート・ワイズです。

 

この映画は、2008年にキアヌ・リーブス主演でリメイク版が作られましたが、

1951年版の方が圧倒的に完成度が高いです。


もちろん、CGなどの特殊効果はリメイク版の方が進化していますが、内容では57年前のオリジナル版が勝っていると思います。


緻密なストーリー展開や、人々の感情を丹念に描く演出で、圧倒的な緊張感を生み出しています。



※ご注意
以後、映画のネタバレがあります。

しかし、きっとこの記事を読んだ後に映画を観ても楽しめますので、安心して読み進めてください (^^)

 

 
 
 
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●異星人が来た理由

4億キロの彼方から、地球にやって来た異星人。

彼は自分を「クラトゥ」と名乗ります。

昆虫のような体ではなく、タコのような姿をしているわけでもない。

体も顔も声も、地球人と全く同じです。

 

 彼は、地球のラジオ電波を傍受して、地球の情報や言語を学んだのだといいます。

 

 いったい何のために、彼は地球に来たのか。

 

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アメリカの大統領補佐官が、彼に来訪の目的をたずねますが、

彼は答えません

 

彼は言います。

「私は、世界中の代表者の前で地球に来た理由を話したいのです

一つの国家と話せば、幼稚な嫉妬や疑問を招くだけです」



そして、こう語ります。

地球の将来は、危機的状況です



ところが、大統領補佐官は、各国の代表を一同に集めるのは困難だと訴えます。

なぜならば、国ごとに事情があり、国同士の対立がある

 
各国の足並みを揃えるのは不可能だ、と。


(第2次大戦後の1950年代は、東西冷戦をはじめ、世界が緊張と疑念で覆われていたようです)

 

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●科学の言葉

厳重な警備から抜け出して、クラトゥは世界的な科学者であるバーンハート教授を訪ねます。


クラトゥには、今すぐ真剣にメッセージを受け止めてくれる人が必要なのです。



彼が訪ねた時、教授は不在でした。

そこで彼は、教授に「科学の言葉で」メッセージを残します。


研究室の黒板いっぱいに、宇宙力学の数式が書かれています。

教授が何週間も取り組んでいるにもかかわらず、いまだに解けていない数式です。

 

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クラトゥは、一目見ただけでその式を解いてしまいました

そして、黒板に「解答のヒント」を書き込んで去りました。

 

 外出から戻った教授は黒板を見て驚愕し、それを書いた人物を探しました。

 そして目の前に現れたのが、クラトゥでした。

 

 教授はたずねます。

「君がこれを書いたのかね?」

 

クラトゥはうなずきます。

 

そして教授に聞きました。

「もう式は解けましたか?」

 

まだです。だから君を呼んだのだ


クラトゥは、ごく簡単な問題だと言わんばかりに説明します。

この式を代入すれば解決します。それで最初の項を戻せる」


「でも他の項は?」


「定数変化法ですよ。これが正解です」

まるで学生に教えるかのように、教授に解答を教えるクラトゥ。

 

 教授は驚き、そしていぶかしげに問います。

自信満々だね

 

クラトゥは答えます。

ええ、これで惑星間を移動したのです

 

 

●クラトゥが来た理由

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 クラトゥは、自分が地球に来た理由を教授に打ち明けます。



「私たちは、地球人が原子力を発見したことを知りました

 
もし地球人が、宇宙で原子力を暴力的に使うことがあれば、他の惑星を脅かすことになる。


そうなれば、地球は異星からの攻撃の対象になるのです


地球の将来は、危機的な状況なのだ

私は、それを警告するために来たのです。

 

もし地球人が、私の言葉に耳を貸さなければ、私は「力」を行使するしかありません。

それは地球を消滅させる「力」です」



教授はたずねます。

「そんな力が存在するのかね?」

「はい、あるのです

 

 

教授はクラトゥの言葉を聞き、そして全てを信じ、各国の各国の代表者を集める約束をします。

 
その一方で、クラトゥに相談をします。


「力」の一端を世界に見せてほしい」


 事の重大さを知らしめるために、世界に衝撃を与えるのだ。

そうすれば、みんな耳を貸す。

 

方法は任せるが、誰も傷つけず、破壊せず、ほんの一例を見せるだけだ。

 

 クラトゥは笑みを浮かべます。

「わかりました。

驚異的だが破壊的ではない。面白い課題ですね

 

 

●クラトゥが見せた「力」

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クラトゥは、スマートでそして驚くべき方法で、教授の要望にこたえます。


彼は、世界中の電力・動力を30分の間止めてしまったのです。

 

世界中の車、電車、バイク、電力装置、輪転機、家庭の電化製品、モーター、

遊園地の乗り物、工場の機械、電話、無線・・・

全ての電力・動力を止めたのです。


ただし、病院や命に関わる施設を除きました


街全体が麻痺して人々はパニックに陥ります。

しかし、正確に30分後、何事もなかったように全てが元に戻りました。



人々の騒ぎをしりめに、教授はクラトゥの思慮に感嘆しました。

実に素晴らしいアイデアだ

 

 

●異星人を捕まえろ

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しかし、この行動は、思わぬ事態を引き起こします。

 

政府は、危険な異星人(クラトゥ)を捕獲するため、非常事態を宣言しました。

生死を問わず、彼を捕まえるのだ。

 

 

 そして、ついにクラトゥは軍隊に追い詰められ、兵士に撃たれました。

 彼は、あっけなく、殺されてしまったのです。



4億kmを旅して人類に伝えられるはずだった「善意」は、人類自身によって抹殺されました。


まるで、大事な親書の意味をわからない子供が、いたずらにその紙を破り捨ててしまったかのように・・・

 

●クラトゥのメッセージ

 

 
 
 
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クラトゥが死ぬと、残された装置が動き出しました。

 

宇宙船の前に立っていた巨大なロボットが、クラトゥの異常を探知して動き出したのです。

ロボットは、クラトゥの遺体がある場所を突き止めます。


一つ目のようなところから強力な光線を発して建物の壁を壊し、クラトゥの遺体を運び出します

 


ロボットは、クラトゥの遺体を宇宙船の中に運び込むと、特殊な装置に横たえます。

そして、未知の装置を操作し、クラトゥを蘇生させます

 

やがて、目を開けるクラトゥ。

しかし、彼は生き返ったわけではなく、しばらくの間命を伸ばしただけです。

 

 あとどれくらい生きるかは、誰にもわかりません。

 

 息を吹き返したクラトゥは、最後の仕事をします。

 彼は、宇宙船の前に集まった各国の代表者たちの前に現れました。

バーンハート教授もいます。

 

そして、クラトゥはついに、彼らに向けて重大なメッセージを話し始めます。

 

 
 
 
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「私は、もうすぐ出発しなければならない。

 

宇宙の発展は進み、異星の文明は接近を続けている。

しかし宇宙では、どの集団からの武力も見逃すことはできない

 


ただし、責任を持てば自由は許される

 


皆さんの祖先は、法によって秩序を作り、警察によって維持した。

我々も、その方針を尊重してきた。

 

我々にも、惑星間で相互防衛を行い侵略に対処するシステムがある。

そのために、ロボットが宇宙船で惑星間を巡回して、治安を守っているのだ。

 


ロボットには、絶対的な「力」が与えられている。

 


その力を行使し始めたら、もはや誰にも止めることはできない。

他者を攻撃する代償は、はかり知れないのだ。

 

 

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この強力なシステムのおかげで、我々は武器も持たずに、暴力や戦争を回避している

 

完璧とは言えないが、このシステムは機能しているのだ。

私は、それを伝えに来た。

 

地球内部の運営は任せるが、

もし暴力を拡大させれば、地球は燃え殻と化すだろう



目を見張ってクラトゥの話を聞く、リーダーたち。

そのまなざしは真剣そのものです。

 

 

「単純な選択だ。

我々と平和に暮らすか、このまま消滅の危機にさらされるかだ。


返事を待っている。

決断は、あなたたち次第だ

 


静まり返る、宇宙船の前の広場。

どの国の指導者たちも、クラトゥを見守っています。


 

●人類がなすべき決断

皆のまなざしを見届けたクラトゥは、宇宙船に戻ります。


「ゴート、ベレンガ!」

ロボットに何かを命じて、ロボットと共に宇宙船の中に消えるクラトゥ。

 

円盤状の宇宙船は、轟音を立てて光り始めます。

驚いて叫び、逃げ惑う人々。

 

やがて光る円盤は空に向かって上昇し、宇宙へ帰って行きました。

 

 

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宇宙の彼方から来た、異星人クラトゥ。

彼は、人類に宿題を置いていきました

 

 それを生かすのか、殺すのか、人類の判断次第です。

 


このストーリーを見ていると、壮大な宇宙の問題だけでなく、ごく身近な社会や人間の問題を連想させることでしょう。

 

原子力だけではなく、我々の周りには、命を脅かすいくつもの要因があります。

自然災害、飢餓、戦争、犯罪、感染症・・・

常に危険と隣り合わせで生きている、といってもよいでしょう。

 

人の判断によって行動は変わり、社会も変わります。

 

果たして私たちは、自分自身に対して、責任をもった判断をしているのでしょうか

 

宇宙人に警告される前に、ましてや宇宙人と衝突する前に、

我々が安心して生き延びるためのより良い選択を、

真剣に考えてみたいものです。

 

 
 
 
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ではまた!

 

 

(エイブラハム・ローブ教授の声明については「まぐまぐニュース!」サイト
ホーキング博士については「Reuters(ロイター)」サイト

より引用・抜粋・ 加工しています)

 

 

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俺の目はごまかせん!「見当たり捜査員」の驚くべき能力

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今、あなたがすれ違った人。

あなたはその人の顔を覚えていますか?


目、口、顔の輪郭、人の顔の特徴はいろいろあります。

それらを記憶して、再び会ったときに思い出すことができるでしょうか?



僕自身はというと・・・

人の顔を覚えるのは、不得意だと思います (^^;)


一度会って話したことがあるのに、後日うっかり「初めまして」などと言ったり、その人だと気付かなかったり・・・

そういう失敗が、過去に何度かありました。


あ!


と思ったときには後の祭 (^^;)

思い出しても汗が出てきます・・・


ただ僕の場合、覚えられないというより、そもそもよく見ていないことが原因だったと思います。

いい年をして言うことではないですが、基本的に「人見知り」なんです。

まあつまり、自意識過剰ですね (^^;)

 

ところで、世の中には、知人の顔を見ても誰の顔かわからない、という悩みを持っている人がいます。


相貌失認(Prosopagnosia)」または「失顔症」と言われています。


相貌失認とは、目・鼻・口などの顔のパーツや輪郭を認識することはできるけれども、

「顔」全体を認識することができない。



簡単に言うと、

目の前の相手が誰だかわからない、という状態です。

 

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著名人の例では、俳優のブラッド・ピットが、以前「自分は相貌失認ではないか」と告白しました。


脳のメカニズムによる症状だそうで、訓練によってある程度は改善できるようですが、顕著な症状だとちょっと深刻な悩みですよね。


そして、世の中には、相貌失認症の正反対の性質を持つ人もいます。


一度見た顔は、ほとんど憶えている

「何千」という顔を記憶することができる。


人並み外れた顔認識能力を持つ「スーパーレコグナイザー(Super recognizers)」です。

 

AI(人工知能)による顔認証

あなたは既に、体験しているでしょうか。


建物の入り口で、マスクをして歩いたまま「カメラ」に顔を向ける。

わずか0.5秒で個人を認証され、体表温度を計測され、セキュリティのゲートが開く。

こんなシステムが、日本の多くの企業やショッピングモール、スタジアム、映画館などに導入されているようです。


AI(人工知能)による顔認識システムです。

 

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1.5mの距離で認識できる場合、わざわざ端末の前で立ち止まる必要もなく、マスクやメガネをつけたままでも、

たとえ髪形が変わっても、個人を判別できるようです。

 

スーパーレコグナイザーとは何者か

AIだけでなく、我々人間の能力にも計り知れないものがあります。


スーパーレコグナイザー」と呼ばれる人たち。

ほとんどの人は、それまで見た顔の約20%しか覚えていないそうですが、

スーパーレコグナイザーは、これまで見た顔の80%を思い出すことができると言われています。


人口の1~2%程度、こうした人は存在するようです。

 

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科学的には、そのメカニズムは解明されていないようですが、脳の紡錘状回顔領域(fusiform face area; FFA)という部位に関連しているのではないか、と言われています。


例えば、ホテルのフロント係やドア係、あるいは営業マンやコンサルタント、政治家など。

人と会う職業や相手を覚えているとよい職業に、こうした能力は向いているかもしれませんね。


そして、特に際立った活躍場所と思われるのが警察の「見当たり捜査」です。

 

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全身に電気が走る

見当たり捜査(みあたりそうさ)とは、警察の捜査手法の一つです。


警察官が、容疑者の顔写真や外見の特徴を記憶して、繁華街などの雑踏の中から容疑者を見つけ出すのです。

足取りがつかめずに追跡不能となった容疑者、つまり「蒸発型被疑者」を発見するのに非常に有効な手法だといいます。


1978年に大阪府警が全国で初めて導入し、その後、全国各地に専従捜査班が作られたそうです。


大阪府警のとある女性捜査員の例です。

彼女は、ジャンパーやズボンといった私服姿で街に溶け込みます。

そして、雑踏の人々の一瞬の表情に全神経を研ぎ澄ませるのです。


「全身に電気が走る」


彼女は、容疑者を見つけたときの感覚をこう表現します。


「学生時代の同級生ならば、久しぶりに再会したとき、

たとえ相手の容姿が変わっていても同じ人物だと分かる。

それに近い感覚です」

 

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俺の目はごまかせん

埼玉県警のある警部補の例。

彼は「850人」もの指名手配犯の顔を覚え、街中で殺人犯などを発見してきました。


彼の発見の決め手は、ズバリ「」だそうです。


歳を取っても目元は変わらない」といいます。


彼は毎日、朝・出勤後・夜の3回にわたり手配写真を見て、頭に焼き付けています。

才能に頼るだけでなく、並々ならぬ努力で捜査を支えているのです。

 

兵庫県警の、ある警部補の例。

声をかけられたある容疑者は、彼に向かってこう言いました。

「人違いや。なんも知らん」


しかし、彼はこう詰め寄ります。

俺の目はごまかせん

容疑者は、やがて堪忍してしまいます。

 

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5年半で90人余りの逮捕に関わったこの警部補は

容疑者本人が気づかない特徴までつかんでいる

と言い切るそうです。


彼は、容疑者約200人の特徴をまとめた手のひらサイズのカードを作り、

出勤前や休憩時間などに、何度も何度も見返して頭にたたき込むことを日課としています。

やはり、絶え間ない努力が彼を支えているのです。


そして極めつけが、イギリスのこの男。

バーミンガムの警察補助員、通称「メモリーコップ」です。

 

「メモリーコップ」の謙虚な素顔

イギリス、ウェストミッドランド州の警察補助員アンディ・ポープ氏は、その記憶力で、これまでに「2,000人以上」の容疑者を発見してきたと言います。

驚異的な顔認証能力と記憶力で、「メモリーコップ」の異名を持っているそうです。


彼は、職場に30分早く到着して、まずパソコンを立ち上げ

その日のミーティングで取り上げる容疑者の写真をざっと見ます。

すると、それだけで全ての容疑者の顔を暗記してしまうというのです!

 

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「1日に」発見した容疑者の最高記録はなんと「17人」。

正真正銘のスーパーレコグナイザーです。

 

彼は、容疑者を発見したときのことをこう語ります。


この人だと直感して
ありがたいことに、それが正しかっただけだ


いったい、彼の能力がどう作用しているのか、自分では言葉にできないのでしょう。


そして彼もやはり、努力を怠りません。

指名手配中の容疑者の情報を、常に自分の中でアップデートし続けています。

 

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彼は、自分についてこう述べています。

「自分に、写真のような正確な記憶力があるのかどうかは、わからない。

誕生日や記念日などは、妻が仕切っているんだ。

僕は、日付を覚えることに関してはまるでダメなんだよ」

 

日本と海外、どちらの捜査員の例を見ても共通していること、それは

 

  • 職務に対して非常に真面目であること。
  • 人知れず努力を続けていること。
  • そして、自身が言葉に表現できない強力な記憶力、直感力、潜在能力を総動員して職務に当たっていること。


自分を信じて、ひたすら努力し、

最大限に能力を引き出す。


スーパーレコグナイザーであり、見当たり捜査員である彼らの姿勢と努力は

我々の大きなお手本になるかもしれませんね。

 

ではまた!


 

(人工知能(AI)については「ニュースイッチ TOP」サイト
https://bit.ly/3giZsnD

見当たり捜査班女性班長については「産経WEST」サイト
https://bit.ly/3svxZBA

埼玉県警の警部補については埼玉新聞サイト
https://bit.ly/32mEAUz

アンディ・ポープ警察補助員については BBS NEWSサイトとexiteニュース

https://bbc.in/3amIkK5

https://bit.ly/3ttz4eC

より引用・抜粋・ 加工しています)

 


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三日坊主がジョギング始めて1年たった!継続とは線ではなく、点の連続。

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闇夜の吐息

タッタッタッタッ・・・

スースーハーハー・・・

スースーハーハー・・・


自分の足音と吐息だけが聞こえる。

暗い道を、ジョギング中だ。


これ以外の音と言えば

鳥の声、風の音、木々の葉っぱの擦れあう音。

目の前に月が浮かび、

夜道にポツリポツリと街灯がついている。


今は深夜?

いや、朝4:30。

夜明け前だ。


冬の早朝は、日の出が遅いために暗い。

風景のほとんどが、闇に溶けている。


たまに、自分と同じようなランナーとすれ違う。

何人かの若者が、暗い公園でスケボーをしている。

 

余計なものが見えない分、いろいろなことを考えられる。


昨日の出来事の整理。

今日の予定。


血が巡り、脳が活性化しているせいなのか

悩んでいた問題の答えが、走っているときにふと思い浮かぶことがある。 

 

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1,800kmの軌跡


1,800km。


これは、僕がこの1年間でジョギングで走った距離の累計です。

突如としてジョギングを始め、毎日のように走り、1年が経ちました。


1,800kmというと、どのくらいの距離なのか。

Google Mapで日本全体を表示して測ってみました。


東京から沖縄県の那覇までが、約1,500km。

東京から中国の上海までが、約1,700 km。
(地図上での単純な直線距離です)


ということは、1,800kmはだいたい「東京から上海まで」です。

 

長年ジョギングを続けている人から見ると、ほんのちっぽけな距離でしょう。

しかし、僕にとっては、足で走った距離として、これまでに経験したことのない途方もない距離です。

 

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長時間のデスクワークが体力と気力を奪う

リモートワーク、テレワークが増えてきている現在、「運動不足」は多くの人の悩みかも知れません。


極度に座りっぱなし状態が続くと、人体はどうなるのか。


僕の状態からお伝えすると、

まず、体のあちこちがこってきて、著しく代謝が落ちます。

血の巡りが悪くなり、体がだるく、重くなってきます。

そして、しまいには頭がボーッとしてきます

こんな状態だと、当然ですが作業効率は落ちます。

 

長時間のデスクワークは、体力と気力を奪うのです。

 

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長時間の座りっぱなし生活は寿命を縮める」という報告も、以前から世界的に取り上げられています。

海外では、デスクワークをしながら立ったり座ったりするための、アップダウンできるデスクがオフィスや学校で普及している、というニュースがありました。


日本はどうなのか。

僕の経験では、そのようなデスクは、他社のオフィスでも見たことがありません。


シドニー大学が、世界20カ国を対象に「平日に座っている時間」を調査したところ、最も長く座っているのが日本だったそうです。


おそらく日本人は、働きすぎで、座り過ぎなのです。


僕はというと、普段の生活の基本がデスクワークです (^^;)

正真正銘の、運動不足、座り過ぎです。


忙しくなればなるほどデスクに張り付きっぱなしになり、

ひどいときには「1日中で10mぐらいの範囲しか移動しない」という日もあります。

自宅兼オフィスなので、行き帰りの移動もないのです。

 

そんな生活を、何年も続けてきました。


そして、とどめはコロナ禍の「自粛生活」でした。

コロナ禍でますます外出の機会が減った僕は、まるで石のような体になり(個人の感想)、ついに体力も気力も限界に達しました。


そして、公園に飛び出しジョギングを始めたのが、1年前でした。


僕にとってのジョギングは、趣味やスポーツを楽しむという感覚よりも、最低限の健康を維持するための非常措置と言えます。

 

血を巡らせるため、代謝を促すため、極度の運動不足を回避するため。

つまり、健康的にマイナスの状態から少しでもプラスの状態にするため、

いや、まずゼロの状態に戻すための努力と言えるかもしれません。


僕のジョギングは、走る楽しみや爽快感は堪能していますが、もともとは決して余裕のある優雅な行動ではないのです。

 

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「ランナー膝」は治ったのか?

前回の記事(ジョギング9か月目)では、膝が痛くなってジョギングを休みがちになったことを書きました。

いつからか左膝が痛くなり、これまでのように走れなくなってしまったのです。


激痛ではないので、頑張れば走れます。


しかし、60~90分程度のジョギングの間、軽い痛みか違和感を我慢することになります。

たまに、カクッと膝の力が抜けそうになることもあります。


足を休ませようとして、ジョギング距離を、8km~10kmから5~6km程度に落としてみました。

あるいは、1週間くらい休みを入れてみました。

でも、なかなかよくなりません。

 

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ネットでいろいろ調べたところ、「ランナー膝」という症状が出ていました。


「ランナー膝」とは、走ることで負荷がかかったり、不具合が出たりする膝のことです。

過剰なランニング時間と距離、柔軟性不足、ウォームアップ不足、他、多くの要因が原因として考えられているようです。


果たして、「ランナー膝」になってしまったのか?


これは、いったいどうしたものだろう・・・

ここまで習慣になってしまったジョギングを、やめたくない。


一番心配なのは、休みを入れているうちに体力が落ちてしまったり、せっかく活性化した心肺機能が落ちてしまったらどうしよう、ということでした。

 

また、走り始める前の状態に戻ってしまうのではないか・・・。


ここはやはり、専門家に相談するしかない。

僕は、何度か通ったことのある、信頼できる整形外科医を訪ねました。

 

整形外科医の意見

その整形外科は、運動時の関節の痛みなどで何度か相談に行ったことがあるところです。

ふだん空手などをしているスポーツマンの先生で、運動時の体の問題に詳しいのです。


レントゲンを撮ったところ、異常なし。

考えられるのは、年齢的な関節周辺の不具合や潤滑の悪さのようです。


しかし、これは特別なことではないとのこと。

年齢的に40代からあり得ることで、僕は50代です。

 

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先生は言いました。

「もしかしたら、ジョギング中に、足運びがずれてしまったことがきっかけなのかもしれませんね。

自分で気付かないぐらいの、段差やアスファルトの上での微妙な足の負担が、痛みにつながっているのかもしれません。

これまでのジョギングによる疲労の蓄積というよりも、その時には気付かないほど小さな何かのきっかけが、あったのだと思います」


そして、先生はこう言ってくれたのです。

「(ジョギングは)せっかく付いた良い習慣なので、

あまり慎重になりすぎず、できるだけ続けるのがいいと思います。

自分で痛みを感じない程度に続けるので、良いと思います」

 

この言葉には、とても勇気づけられました。

 

1週間限定の痛み止めの飲み薬と、塗り薬を出してもらいました。

この飲み薬が、効いたのです。

スッキリと痛みが消えました。


しかし、ちょっと走るとまた違和感が蘇ってきます


そしてまた先生を訪ね、処方薬を飲み、また走ってみる。

2度繰り返すと、次第に痛みは小さくなっていきました。


今もまだ、多少の違和感がありますが、ジョギングを続けています。

以前の通りに、ほぼ毎日走れるようになりました。

8~10kmを、走っています。


当たり前のように走れる。

当たり前のように健康を感じられる。

この感覚・認識は、ジョギングを始めてから改めて得た、大きな財産です。

 

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もう「三日坊主」は通用しない

地道にコツコツ続けるのが嫌いな、怠け者で三日坊主の僕が、

1年間、ほぼ毎日ジョギングをしている。


これは、全くもって信じがたい現象です(笑)

自分でも驚きです。


そして、同時に思いました。

1年間続けてこれたからには、もう「三日坊主」という言葉は通用しないな、と。


「三日坊主だから」と言って、すぐに諦めることはできない。

「三日坊主だから」と言って、簡単に挫折したりできない。


別に、さぼっても誰かが見ているわけではありません。

やめてしまっても、誰も困らないし、迷惑もかかりません。


でも、もし意味もなく継続を放棄してしまったら、

きっと自分の中で居心地が悪いだろうと思います。


自分に対して申し訳ないだろう、と思うのです。

 

線ではなく点の連続

1年間ジョギングしてきて思ったのは、

継続とは「線」ではなく「点の連続」だということです。


「惰性でダラダラ」した状態では、僕は1時間も走れません。

そもそも、僕にそんな大層な体力はありません (^^;)


「何となく」では、続かないのです。

 

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朝、完全に目覚める前に、

「ああ、今日は休んで寝坊しようかな・・・」

「ちょっと足が疲れているから、しばらく休んでもいいかな・・・」

そう思うことは、決して少なくありません。


きっとこういうことは、誰でも同じだと思います。


でも、試しにエイっと起きてみる

どうしてもしんどかったら、今日は走るのはやめて仕事に切り替えよう。


でも、起きたらやはり、ウェアを着て準備運動をしてしまうのです。

今度は、外に出てみて、それでも嫌だったら中止にしよう。


そして外に出ると、「いつもの空気」が心地よいのです。

「いつもの時間、いつもの場所、いつもの空気に、戻ってきた」

そう感じます。


きっと、日々重ねてきた「1日の連続」が体に染み付いているのでしょう。


そして、今日も試しに走ってみる。

試しに頑張ってみる。


明日はわからないけど、まず今日やってみる。

 
そして、終わると必ず、100%、「走ってよかった」と思うのです。

それの連続のような気がします。

 


 

僕がジョギングを始めたとき、3か月目、6か月目、9か月目の様子はこちらです。

それぞれの時期に、それぞれのドラマがあります。

是非ご覧ください!

www.wakaru-log.com

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ではまた! 

 

 



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笑いはうつる、怒りもうつる。ミラーニューロンが人をつなげる。

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人は誰でも独りぼっち、孤独な存在です。


こう言うと、ネガティブな言葉に聞こえるかもしれませんが、

考えてみてください。


たとえ親しい友人でも、家族や恋人同士でも

喜びや悲しみの感情は、突き詰めれば自分の中だけのもの。


自分と全く同じ気持ちを、他人に味わってもらうことはできず

自分が、他人の心の中に入っていくこともできないでしょう。


結局のところ


人は生まれてから死ぬまで、自分だけに見える風景を見て、生きていくのでしょうか。

 

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しかし一方で、人間にはこういう性質もあります。


人が笑うのを見ていると、いつの間にか自分も笑顔になっている

怒っている人の近くにいると、なぜか自分も気が立ってくる


映画を夢中で観ていると、主人公がピンチの場面では、自分がその主人公になり切ってドキドキして手に汗を握り、口をあんぐり開けている。


人は、他者の行動や状況をまるで自分のことのように感じて、怒り、笑い、感動します。

人には、無意識に他者に「共感」する性質があるのです。


それは、考えるよりも先に出る細胞レベルの反応とも言えます。


実はこの反応は、赤ん坊のころから発達し始める「ミラーニューロン」という脳神経の働きだと言われています。

 

 

物まね細胞「ミラーニューロン」

イタリア生まれで、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の教授である、神経学者のマルコ・イアコボーニ氏。

彼が、2008年に「ミラーニューロンの発見」という本を書きました。

 

 

ミラーニューロンとは、霊長類などの高等動物の脳内で

他者の行動を「見る」だけで自分が行動した時と同じように活性化する、神経細胞のことです。

脳の「F5野」という位置にある、数百万個のニューロン(神経細胞)です。

 

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例えば、他人がコップを持つ動作を見ると、自分がコップを持つときの運動神経が活性化する。

ピーナッツの殻を割る音を聞くと、殻を割るための動作をする運動神経が反応する。


ミラーニューロンには他者の動作や表情を無意識に「模倣」する能力があり、

他者がしていることを見て自分のことのように感じる「共感(エンパシー)能力」を持っている、と考えられています。


まるで「鏡」のような反応をすることから、「ミラーニューロン」と名付けられています。


普段、私たちが映画を観て感動するのも、小説を読んで感情移入するのも、ミラーニューロンの働きだと言われています。

 

早く教会に着いて!

遥か昔、僕が小学校6年生の頃(笑)こんなことがありました。

6年生の僕は、映画館で「オーメン(The Omen)」という恐怖映画を見ていました。

名優グレゴリー・ペックが主演した、リチャード・ドナー監督の映画です。

 

 
 
 
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物語のクライマックスで、主人公のアメリカ人駐英大使(グレゴリー・ペック)が、夜中に息子を車に乗せて教会に行くシーンがあります。


教会の祭壇で、息子のダミアンを「始末」する
ためです。
(なぜ息子を始末するのか知らない方は、映画をご覧ください)


悪魔の力を封じ込めるために、息子を始末するのです。

一刻を争う事態です。


泣き叫ぶダミアンを乗せて、ものすごい勢いで夜道を走る車。


その車を見て、パトカーが停車するように言います。

しかし、大使は振り切って教会に車を飛ばします。


大使の車を追うパトカー。

教会に急ぐ大使の車。


緊迫したシーンです。


そのとき、映画を見ていた観客の一人の女性が声を上げました


「早く!」


とたんに、観客の間にドッと小さな笑いが起こりました。


思わず出てしまった、女性の小さな叫び声。

早く教会に着いて!という意味ですが、その叫びは、おそらく他の観客の気持ちを代弁したものでした。


みんなは女性の気持ちに同調して、緊迫した場面でありながらつい笑いが出てしまったのです。

(僕はそう感じました)

 

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他人の心にアクセスする

人との間の感動や共感に深く関わっているミラーニューロン。

それも、ひとつひとつを深く考えて行うものではなく、もっと楽な方法で他人の感情を「瞬時に」理解する。

細胞で感じ取る。

いわば「他人の心にアクセスする」と言える。

イアコボーニ氏はそう説きます。

 

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人の能力を伸ばす

まだ言葉が話せない段階の子どもが、「模倣ごっこ」をすればするほど、後になってよく話すようになるそうです。


そして大人になっても


例えば、体育の授業で高い技術を持った先生の動きを見ていると、それを見ている生徒の脳では「先生の動きと同じように」運動脳が活性化するそうです。


極端なことを言えば、自分は動かずに先生を見ているだけでも、生徒の技術は向上しやすくなるというのです。

お手本が上手であればあるほど生徒の上達が早いようで、これらもミラーニューロンの働きのおかげだそうです。

 

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どんな人の中にいるかで、自分は変わる

周囲にいる5人の平均年収がその人の年収である」という例えは、よく使われます。


多くの場合、年収自体がどうというよりは、

どんな集団にいるのか

どんな仲間と付き合うのか

その人の自己評価基準にもなり、発展の可能性をも左右するということなのでしょう。


周囲の人が誰なのかによって、自分の感情も行動も、性格すらも変化するかもしれません。

人は、同じグループのメンバーに対しては、他の人々には感じないほどの「自分との類似性」を感じるようです。

 

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そして、互いに好意を持っているほど、互いに模倣し合う傾向が強いようです。


今は、コロナ感染防止のため実際に大勢が集まることはあまりないかもしれませんが

たとえZoomやSNSなどのオンライン上のやり取りであっても、人の発言や態度は、リアルで会う時と基本的には同じではないかと思います。


接触する相手が誰なのか」は、たとえオンラインであっても重要な問題かもしれませんね。

 

暴力の模倣

自動的に模倣を行う」という人の性質には、恐ろしい面もあるようです。

その例として、イアコボーニ氏は次の事件を挙げます。


※以下、少々残虐な描写が含まれますので、読みたくない方は画面を閉じてください。

 

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2002年に、アメリカのニューハンプシャー州である事件が起きました。

2人の10代の少年が、大学教授夫妻を殺害したのです。

少年たちは、強盗を働こうとして、自宅にいた夫妻をナイフで何度も突き刺しました。


事件後、裁判が始まり、審理が進むにつれて、2人が普段リアリティのあるインタラクティブなビデオゲームを楽しんでいたことがわかりました。

そのゲームでは、犠牲者を刃物で突き刺して血を流しながら死んでいくのを見ている場面があったそうです。

日頃、ゲームの中の残虐な場面に浸っていたことが、事件に関連したのかもしれません。



その事件に先立つ1999年、アメリカのコロラド州で2人の男子生徒が学校で銃を乱射し、12人の生徒と1人の教師を射殺するという凄惨な事件が起きました。

コロンバイン高校銃乱射事件です。

乱射した2人も自殺しました。


そして、その乱射事件後、50日の間に350件以上にのぼる学校襲撃の脅迫があったそうです。

 

乱射事件が起こる前は1年に1回か2回だったそうなので、急激な増加といえます。

コロンバイン高校の事件が、これらの脅迫事件の引き金になったという可能性は、否定できないようです。

 

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この他にも、物語や事件を模倣したと思われる犯罪は、世界中に数えきれないほどあるでしょう。


これらの事例が、人が持っている「模倣」の性質のせいなのかどうか、その証明はできません。

しかし、ミラーニューロンがいかなる方向へも作用する例」なのかもしれない、とイアコボーニ氏は唱えます。


人は、理性よりも、生物学的なメカニズムで行動するようです。

知性による判断よりも、もっと原初的な部分や力で行動するということです。


そして、人にはやはり、自分が見たものにそのまま影響されてしまうという性質があるのです。

これは誰もが、どこかで忘れてはならないことでしょう。

 

他人の中に自分自身を見る

人は、ミラーニューロンによって身体、行動、話し方に至るまで、お互いを「同調」しようとする傾向があります。

模倣や共感によって、親密さや帰属性を求めるのです。


ミラーニューロンは、「自分と他人との間の溝を埋めようとする脳細胞であるに違いない」とイアコボーニ氏は説きます。

 

人間は、生まれつき共感を覚えるようにできているのです。

 

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赤ん坊は、自分の真似をする大人に一番関心を寄せます。

自分の動作と相手の動作が似ていること、動作が共有されていることを、感じ取るのです。

 

人は他人を見て、その中に自分を見る


つまり、他人の中においてこそ、自分の位置を知ることができるのかもしれません。

生き抜いていくために、きっとそうした性質があるのでしょう。


私たちは、自動的に働くミラーニューロンの活動を、時には理性や意志で「方向付け」をしながら、進むべき道を見つけていきたいですね。

 

 

ではまた!

 

 

(当記事は、マルコ・イアコボーニ著の「ミラーニューロンの発見」 から抜粋・引用・加工しています)

 

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三日坊主がジョギング始めて9か月。怪奇・カメラ男出現!早朝の酔っ払いはあの人?

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三日坊主がジョギングを始めて、なんと9か月が経過しました。

前回は6か月目の報告でしたが、今回は9か月目の報告です。


季節は冬になり、日の出時間がすっかり遅くなって、現在はほとんど夜明け前の暗い道を走っています

この3か月の間にも、いろいろなことがありました。

例えば、晩夏のころでした・・・

 

怪奇、カメラ男現る!

晩夏の朝5:30。

夜が明けて、あたりは次第に明るくなってきます。

汗が、風に冷やされて心地よい。

ああ、今日も走ってよかった」と思える瞬間です。


同じ歩道の向こうから、男が歩いて来ます。

30代前半ぐらいでしょうか。

ボサボサの長髪でトレーナーを着て、頬から顎、口まで伸ばし放題の無精髭。

まるで、無人島でサバイバル生活をした「ナスD」か、懸賞生活をした「なすび」のような風貌です。

おそらく、これから仕事に出かけるのではなく、自由時間を過ごしている人です。

この男を仮に「髭男(ひげおとこ)」と呼びます。

 

※参考:これが「なすD」です。「髭男」はもっと髭ボーボーでした。

 

この時間帯、この世田谷区砧公園の近くで出会うのは、ランナーか、ウォーカーか、犬を連れて散歩する人ぐらいです。

それ以外の人とは、めったに会いません。

 

この髭男は、マスクをしていません。


僕は、コロナ感染を意識して、反対側の歩道に渡りました。

ジョギング中でも、僕は、人に近づくときにはフェイスカバーをしますが(それ以外はバンダナのように頭に巻いている)、まずできるだけ人に近づかないようにしています。

ここ数か月間で、すっかりそういう習慣が身についてしまいました。

 

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するとなぜか、髭男も僕と同じ反対側の歩道に移ってきました。

まわりには妨害する車も人もいない、空いた空間なのに、です。

 

何だこの男?わざわざ避けているのに。

 

すると髭男は、いきなり叫びながら走り寄ってきました。

もう準備はできてるんだああ!!(意味不明)」

ニヤニヤしながら、アクションカメラをこちらに向けています。

カメラの機種は、DJI POCKETのように見えました。

 

僕は、反射的に男から離れて、遠ざかりました。

なんだこいつは?!!

もしや、迷惑動画やいたずら動画の撮影でもしているのか?


とにかく、マスク無しの男が叫びながら走り寄ってくるのですから、飛び避けました。

髭男から遠く離れます。

すると髭男は、元の歩道に戻って去って行きました。

まるで、獲物に興味を失った獣のように。

飛び退いた僕は、さしずめ、か弱い野ウサギといったところでしょうか。


しかし、唖然としていた僕にも怒りが込み上げてきました。

許せない!

そして、こちらも髭男をスマホで撮影してやろうと、引き返して追いかけました。

おい待て!!」と叫びかけました。


髭男は一瞬振り返りましたが、さして気にすることもなく、すぐそばのマンションの敷地に入って行きました。

ここに住んでいるのか?

しばらくマンションの前で待っていましたが、そのまま消えてしまったので、僕は諦めてジョギングに戻りました。

 

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後で考えると、とっさの怒りで追いかけていくとは、僕も危ない行動をとっていました

そもそも、得体の知れない相手です。

場合によっては、思わぬ事件に発展していたかも知れません。

突発的な感情で行動するのは、やはり危ない。

そう思いました。


それにしても、この髭男。

50年ほど前の、仮面ライダー(1号)のときに登場した「恐怖、蜂女!」とか「怪奇、蜘蛛男!」のように、全くもって不気味な存在でした。

 いったい何が目的だったのか(たぶん動画の撮影)。


怪奇、カメラ男!

僕はこの男を、そう呼ぶことにしました。


それ以来、ジョギングのたびにカメラ男出現地点を走りますが、再び彼に会ったことはありません。

 

※参考:仮面ライダーの「蜘蛛男」

 

さらに、こんなこともありました。

やはり晩夏、まだ暑さが残る季節の6:00ごろでした・・・

 

泥酔して早朝の道に寝そべる、その男は・・・!

晩夏の6:00ごろ。

ふと公園から公道に走り出ると、一台のタクシーがハザードランプを付けて止まっています。

タクシーの横の歩道に、一人の男が寝そべっています。

アスファルトの上に、正体なくゴロンと寝転がっているのです。

一目で、酔っ払いだとわかります。


年の頃、30代半ばくらいでしょうか。

GパンにTシャツというラフな格好でありながら、どこか垢ぬけた様子。

向こう側に顔があるので、人物は判別できません。

 

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タクシーの運転手が車から降りて、何やら後部座席を確認しています。

「あ、この男が乗っていて吐いたのか」と思いました。
(後から察するに、多分吐いてはいなかったようですが)

とにかく、早朝のこの時間に、すっかり困った様子の運転手。


これは迷惑だよな・・・

そう思いながら、僕は走り過ぎました。


やがて、周回の2周目で再びその場所を通ったとき、まだタクシーは止まっていました。

男は、依然として道に転がったままです。

今度は警察官が一人来ています。

運転手が呼んだのでしょう。

警察官がしゃがみこんで、何か男に話しかけていますが、一向に男が起きる気配はありません。

たまに動くので、意識はあるようですが。

 

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歩道に寝たままの状態だったので運転手もさすがに離れられなかったのか、はたまた、料金を払っていなかったのか。


これはひどい・・・


タクシーは立ち去ることもできず、仕事をすることもできず、一人の男のためにただ無駄な時間だけが過ぎていきます

大変な損害です。

どんなに酔っていても眠くても、何とか自分の家に辿り着くか、さもなくば料金を払って一人で公園のベンチにでも寝ていればいいものを。

タクシーの横の歩道に倒れ込んで寝込んでしまうとは・・・。

 

そしてその2日後ぐらいに、あるニュースを見ました。

これです↓

www.asahi.com

 

ニュースによると・・・

タクシーに乗車した際、泥酔して料金を支払えず、警視庁に一時保護されていた

 
期日とエリアが、非常にマッチする。

寝そべっていた男とは、果たして田中圭さんだったのか?

それはいまだに謎です(かなりの確率でクロですが ( ̄▽ ̄;))。

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いったい何が、ジョギングを継続させているのか

 2019年初め、自粛生活、リモート生活の風潮が高まってきたころ、あまりの運動不足のあげくに思い切って始めたジョギング。

三日坊主の僕がジョギングを始めて、


9か月。約270日。


僕にとっては、信じがたいことです。

いったいなぜ、このめんどくさそうな、しんどそうなことが続いているのか。


自分で思うに、その一番の理由は「気持ち良い」ということです。

例えば、

  • 自然との一体感に陶酔する
  • 日々変わる季節を味わう
  • 夜明けの空の色に見とれる
  • 体内の循環を味わう
  • 「今日も走った」という達成感にひたる


こうして書き出してみると、何やら自己満足の極致ですが(^^;)


こうした快感が、面倒と思う気持ちよりも、遥かに勝っているのです。

走るのを辞めては、これらの快感が失われてしまう。


もったいない!

そう思うようになったのです。

 

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人間は、不思議な生き物です。

 

こもることが日常化すればそれに慣れてしまい、動くことに快感を覚えたらそれに慣れてしまう。

ジョギングを始めるまでは、グズグズ躊躇して2年以上もかかったくせに、開始してから9か月後の今は「ジョギングを辞めたくない」という思いに支配されています。


現状を失いたくない」という本能が、作用するのかもしれません。

人間はやはり、「変わりたくない生き物」なのでしょうか。


一つ言えるのは、「どんな習慣でも、おそらく身に着けることはできる」ということです。

楽しみや快感を見いだせれば、それは続けられます。

そして、自分にとって「毒」であろうが「薬」であろうが、何を習慣にするかは自分で選べるのです。

 

ジョギング歴10年の先輩であるけん (id:academij) さんは、こう言います。

習慣を変えるには、別な習慣で上書きすることだ

 

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内なる声を聞く

ところで、走っているときに様々な考えが浮かぶことがあります。


おそらく普段よりも脳が活性化していて、

驚くほど豊富に、いろいろな問題の答えやアイデアが浮かぶことがあるのです。

でも・・・走り終わるころには忘れてしまいます(≧▽≦)

 

ですから、僕はスマートフォンの「ボイスメモ機能」を使って、思いついたことをその場で録音しています。

走っている最中でも、です。

アームバンドにくくり付けたスマホを操作して、録音するのです。


そして、録音したものを後で聞きます。

すると、おおよそ半分は、とても恥ずかしいものです。


深夜に夢中に書いた感動的な文章を翌朝に読んでみると、恥ずかしくてとても読めない!

そんなことがあると思いますが、それに似ています(^^;)

 

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走っている最中は、気持ちも高揚しているのかもしれません。


大して意味がないことでも、何やら感動的に語っています (///△///)

手前味噌で唐突な言葉も多いのです。

こうした恥ずかしいコメントは後でバンバン削除するのですが、もう半分の録音は、意外といいこと言っています(笑)


たとえば、普段悩んでいることの解決策や、斬新なアイデアをしゃべっているのです。

時には、自分が自分にアドバイスをくれることもあります。


普段は心の奥に沈んでいる考えやアイデアが、活性化した脳に浮かび上がってくるかのようです。

やはり、心と体は、切っても切れない関係なのです。

 

そして、ランナー膝になった?

ところで、この記事を執筆している今、実は膝あたりが痛くてジョギングを休んでいます。

普段歩くのは問題ありませんが、走った後に痛くなります。

 

もう1週間も走っていません!

ジョギングを開始してからこんなに休むのは、初めてのことです。

 

調べてみると、もしかしたら、「ランナー膝」になったのかもしれません。

 

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「ランナー膝」とは、走ることで負荷がかかったり、不具合が出たりする膝のことです。

過剰なランニング時間と距離、柔軟性不足(ウォームアップ不足)他、多くの要因が原因として考えられるようです。


このシリーズの次の記事は12か月目(1年目)の予定です。

今から3か月後です。

果たして、12か月目でもジョギングを続けているのか?

膝は治っているのか?

 

それは、また改めて報告します!

 

 


 

僕がジョギングを始めたとき、3か月目、6か月目、1年目の様子はこちらです。

それぞれの時期に、それぞれのドラマがあります。

是非ご覧ください!

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ではまた!

 

 



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標高3,700メートルの闘い。富士山頂で世界最大の計測範囲のレーダーを作り上げた名もなき男たち。

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吹き荒れる強風。


硬く凍った雪面。


一歩一歩、登山靴に付けたアイゼンが雪面に突き刺さる。


もし風にあおられてバランスを失ったら、どこまで滑落するかわからない急斜面。

そんな雪山を登っている、7人の男たち。

彼らは、電機メーカーや建設会社の技術者たちで、山登りに関しては全くの素人だった。

※アイゼン:金属の爪が付いた登山用具

 

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彼らは、お互いをザイル(クライミングロープ)で繋がなかった。


なぜならば、みんながつながったまま一人が滑ると、みんなが滑落してしまう。

だから、もし滑り落ちたら、一人で落ちていってくれ

そういう意味だった。


念のため、家族に遺書を残してきた者もいた。

真冬のこの時期、本来山と無縁な彼らがなぜこのような危険な場所にやって来たのか?

 

標高が高くなるにつれ、酸素が薄くなる。

そして、目の前には急斜面のアイスバーンが立ちはだかる。


やがて、彼らは頂上に到着した。

氷点下20℃。

最大風速100mの突風が吹き荒れる。


風速100m」とは、地上でいえば、家屋が倒壊し、車が持ち上げられて飛ばされる。

森林の大木でも、引き抜かれることがある。

そんな威力だという。


ここは、標高3,776m。

厳冬期の富士山頂だ。

 

 

伊勢湾台風の爪あと

昭和34年(1959年)9月に、超大型の「伊勢湾台風」が日本に上陸しました。

被害家屋83万戸、死者・行方不明者は5,000人にのぼり、東海地域を中心に壊滅的な被害をもたらしました。

明治以降の日本の台風災害史上で最悪の惨事でした。

 

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伊勢湾台風で被災した住民の避難を始める陸上自衛隊と米軍のヘリ

wikipedia

 

ここまで甚大な被害になったのは、台風の威力はもちろんのこと、当時の気象レーダーの性能にも問題があったようです。

当時のレーダーは、観測範囲が狭く、スピードが早い台風が来た場合にはそれを認識できるのが「上陸する3時間前」だったそうです。

これでは、台風の襲来に対策をとる余裕もありません。

 

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伊勢湾台風の被害

wikipedia

 
伊勢湾台風の時のような惨事を、二度と繰り返したくない。

何とか対策を立てなければならない。

それが、社会的な急務でした。

巨大台風から日本を救う

巨大台風の来襲に準備するためには、24時間以上前に南海上で台風を捉える必要があります。

そのためには、気象レーダーでもっと広い範囲をカバーしなければなりません。


いったいどうしたらよいのか。

答えは、「4,000mの高さ」に気象レーダーを設置することでした。


4,000mの高さ。


日本でその高さをおおよそ満たすには、富士山頂しかありません。

しかし、果たして富士山頂でそんな工事ができるのか?

当時、世界でもそんな高いところに気象レーダーを建設した例はなかったのです。


それまで、世界で一番高所にあった気象用レーダーは、アメリカのモンタナ州にある標高2,600mの山頂のレーダーでした。

 

富士山頂は3,776m。それよりも1,100m以上も高い標高なのです。

 

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9,000人のスタッフたち

富士山レーダー」の実現のために、一大プロジェクトが立ち上げられました。

時代は、高度経済成長期。

戦後、団結力やチームワークで日本を支えてきた「延べ9,000人」が、このプロジェクトに関わることになります。


プロジェクトの総責任者は、気象庁測器課の藤原寛人課長

気象庁随一の一徹(いってつ)者、と呼ばれていました。

この藤原課長とは、なんと、後に「新田次郎」のペンネームで作家として活動し「八甲田山死の彷徨」「アラスカ物語」他、多数の著書を出した、その人でした。


富士山レーダーの工期は、2年とされました。


しかし、実際に工事ができる時期は、雪が消える夏の2か月間だけ

まさに、時間との闘いです。

成功すれば、富士山レーダーの観測範囲は、当時世界最大になるものでした。

 

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しかし、いよいよ工事を6か月後に控えた時、大きなアクシデントに見舞われます。

計画の大きな「見落とし」が発覚したのです。 

 

レーダーを動かす遥かな直線

富士山レーダーは、気象庁から電波を飛ばして遠隔操作を行わなければなりません。

そのためには、東京の気象庁から富士山頂まで、遮ることのない一本のラインが通っていなければならないのです。

途中で何かが邪魔をしては、電波が届きません。


ところが、途中にその「邪魔もの」があるかもしれなかったのです。


「邪魔もの」はいったいどこにあるのか?

それはまさに、レーダーを設置する富士山頂にありました


レーダーの建設予定地は、山頂で一番高い「剣ヶ峰(けんがみね)」という地点。

障害物かもしれないものとは、剣ヶ峰から見て「反対側の頂き」でした。

 

剣ヶ峰から東京方面を望むと、その「頂き」が遮っているように見えます。

 

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まさに、富士山自身が邪魔をしている!


これに気付いたのは、レーダー開発を担当する三菱電機と大成建設の技術者たちでした。

計画の根幹を揺るがすような事態です。

そこで彼らは、この冬の時期に、自らが富士山に登って確かめる、と申し出たのです。


昭和38年、かつてない大雪に見舞われた冬。

その冬に、彼らは危険を冒して富士山頂に登りました。

冒頭に登場した7人が、彼らでした。

 

かすかな光

果たして、富士山頂と気象庁を直線で結ぶことができるのか。

実験計画はいたってシンプル。

日没後、山頂から強力な発光体(発煙筒のようなもの)をかざし、東京の方向に向ける。

その光を、東京・気象庁の計測課の望遠レンズで確認できたらOK、というものです。

 

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それにしても・・・


今なら、例えばレーザーとか、他にも方法が考えられるのかもしれませんが

「発光体を目視で確認する」とは、何とも危うい気がします (^^;)

 

望遠レンズで見るとはいえ、その距離は100kmです。

気温によって、途中で光がゆらゆらしてしまわないか

いやそれどころか、光が弱過ぎて、小さ過ぎて、見逃してしまわないか。

いくつもの心配が、頭をよぎりますよね・・・


しかし、その方法しかなかったのでしょう。


彼らは、1週間富士山頂から光を送りました。

しかし、気象庁では全く光は見えませんでした


光が届かないとなると、遠隔操作の電波は届かない。

もはや、このレーダー計画は頓挫することになるのか。


山頂の彼らは、やがて下山を決意して、最後の10数本の発行体にまとめて火をつけました。

これで最後だ。

東京に向けて、最後の光をかざしました。

 

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すると・・・

夜8時、気象庁で光が確認できました。

一瞬のことだったが、光が見えた!

山頂の彼らに、無線で「成功」の知らせが届きました。


バッチリ見えたぞ!


最後の最後に見えた、かすかな光でした。

これで、遠隔操作の電波は届くはずだ。

「富士山レーダープロジェクト」は、こうして第一歩を踏み出したのです。

 

次々とやってくる「不可能」

プロジェクトは、とにかく「不可能」の連続でした。

山頂では、セメントを練る水がなく、雪解け水を探して急斜面を往復するありさまです。

工事のために地面を掘れば、夏でも溶けることのない永久凍土に突き当たる。

そして何よりも、山頂の空気は地上の3分の2の薄さ。

作業員は、次々と激しい頭痛や吐き気に襲われました。


高山病です。


さらに、山頂付近では、雷がこの世のものとは思えないほどのすさまじい音で落ちます。


当初30人いた作業員は、次々に下山してしまい

新たに人員を補充しても、一週間ともたずに帰ってしまいました。


絶望的な状況です。


それでも、当時29歳の現場監督・伊藤庄助は、下山しようとする作業員を一人一人説得して作業を続けました。

彼自身、慢性の高山病と疲労によって顔が青黒く腫れ上がっていました。

 

「つくるんだ、つくらなきゃいけないんだ」

彼は、そういう一心で取り組んでいたそうです。

 

現場監督という職務、責任感が、彼をギリギリのところで踏ん張らせたのでしょう。

 

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富士山頂
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風速100mに勝て

レーダー開発を進めていた三菱電機の技術者たちも、難問にぶつかっていました。

富士山頂に吹く突風は、風速100m以上

果たして、レーダーアンテナがそこまでの強風に耐えられるのか?

 

徹夜で議論が繰り返されました。


考え抜いた挙句、彼らは、アンテナを頑丈なドームで覆うことにしました。

そして、このレーダードームは、風速100m以上に耐えられるようにアルミ合金で骨組みが作られ、数ミリの狂いもなく、仕上げられました。

 

技術者たちのプロ根性と粘りによって、レーダードームが完成したのです。

 

山頂の乱気流

最後に立ちはだかる「不可能」

それは、ヘリコプターで山頂までレーダードームを運ぶという作業です。


レーダードームは、骨組みだけで620kgの重さです。

ところが、ヘリコプターで空輸できる限界は450kgだったのです。

 

これでは、とうてい運べません。

 

しかも、富士山頂では気流が予測できず、予期せぬ乱気流が起こる可能性がありました。

そのころ実際に、報道機関のヘリコプターが乱気流に巻き込まれて墜落するという事故も、起きていたのです。

 

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「この仕事のパイロットには、この男しかいない」

 

ここで、旧日本海軍航空隊出身の神田真三に白羽の矢が立ちました。

彼は、山火事の消火や建設資材の輸送などのプロでした。

しかし、富士山の河口付近は飛んだことがありません。

 

神田は、事前に複雑な富士山の気流を克明に調べました。

そして、次のような結論に達しました。

ヘリが10cmでも火口の中に入ったら、最後だ


命がけの飛行です。 

 

空輸日は、8月15日に決定しました。

奇しくも終戦記念日です。

 

太平洋戦争のとき、神田は海軍航空隊で零戦のパイロットを養成する教官でした。

特攻作戦で次々と戦地に向かう、多くの若い教え子たち。

彼は、それを見送りました。

 

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出撃準備中の零戦五二型丙
wikipedia


みんな戦地に散っていった。

自分は生き残った。

だから、自分は精一杯頑張らなければならない。

彼は、強くそう思っていました。


ヘリコプターの機体を少しでも軽くするために、鉄製の扉は外され、副操縦席もおろされました。

そして、620kgのレーダードームはヘリコプターに釣りあげられ、富士山頂に運ばれました。

 

山頂では、ホバリングの味方をしてくれるはずの「向かい風」が止んでしまい、危険なホバリングが続きましたが、何とか、レーダードームを土台の上に設置することができました。

 

多くの山頂のスタッフが、ヘリコプターに感謝の言葉を投げました。


無事帰還した神田は、地上に着陸した後2分間、機体から降りてきませんでした

あまりの重圧、緊張、そして安堵感に、動けなくなったのか。

あるいは、こみ上げる気持ちがおさまるまで、やり過ごしていたのかも知れません。

 

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富士山レーダードーム
photoAC

成し遂げた男たち

昭和39年9月、ついに富士山レーダーは稼働を始めました。

レーダー画面には、半径800kmの範囲の映像が映し出されました。

世界最大の観測範囲で、巨大台風をとらえるシステムができたのです。

 

それから35年間、富士山レーダーは台風から日本を守り、1999年11月1日に気象衛星にその役割を譲りました。

現在、レーダードームは、富士山のふもとの富士山レーダードーム館に移設保存されています。

 

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富士山レーダードーム館
photoAC

 

計画の総責任者・藤原課長は、後に語りました。


「非常に熱っぽい一団が、できあがっちゃったんです。

それであの仕事ができ上がったんです。

今考えてもわからない。

どうして、あんな素晴らしい仕事が、短期間でできたのか」



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気象庁測器課の藤原寛人課長
後のペンネーム「新田次郎」
wikipedia

 

次々と立ちはだかる「不可能」の連続。

それを解決していく、人々の努力による「奇跡」の連続。


今では古い気質とされているかもしれない、
名もなきスタッフたちの「昭和の根性」が、これを成し遂げたのです。


いや、その「根性」はきっと今でも、誰の心にも生きているはずです。


人が本当に困って、本気でそれを解決しようとする限り

諦めない気持ちがある限り

泥臭く、純粋で、ひたむきなその精神は、必ず現れるはずです。

 

 

ではまた!

 

 

(当記事は、NHKの「プロジェクトX」第1回で放送された「巨大台風から日本を守れ」の内容を、抜粋・引用・加工しています)

(山頂の作業の様子は、大成建設サイトなどから、抜粋・引用・加工しています

 

 

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「スキナーの鳩」とは何か。人は「迷信行動」に勇気づけられ、縛られる。

f:id:wakaru-web:20200914215135j:plain

 

あなたは、こんなことをしたことがあるでしょうか。


「来月、大事な試験を控えているので、神社に行って合格祈願した」

「人前で話すときに緊張するので、直前に手のひらに「人」の文字を書いて飲み込んでみた」

「商売繁盛するように、ガネーシャ(像の神様)の置物を買った」

 

いわゆる、「縁起を担ぐ」「験(げん)を担ぐ」などと呼ばれることです。


良い結果になったら「思いが通じたのだ」と喜び

悪い結果になったら「運が悪かった」「やり方が悪かった」と残念がります。


実際には、「験(げん)担ぎ」の行為と結果との間には、因果関係はないはずです。

それでも、「その行為をしなかったことで、損をしたり災難にあいたくない」と感じます。

ほとんど関係ないことだと思っているのに、一応やっておこう。見ておこう。

 

f:id:wakaru-web:20200924140901j:plainphotoAC


そして、人は時に全く見当違いの行為が、結果につながる方法だと勘違いすることもあります。

これを心理学では「非合理なストーリー構築機能」と言うようです。

この機能は、人間だけにあるのではなく、動物にもあります。


なんと「鳥の脳」にまで遡ります。 

 

 

スキナーの鳩

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バラス・フレデリック・スキナー
Wikimedia Commons

 

1948年に、アメリカの心理学者であるバラス・フレデリック・スキナーは、「鳩」を使った実験をしました。

空腹の鳩を、実験用の箱に入れて、鳩がどのような行動をとったかにかかわらず、5秒ごとに餌が出るようにセットしました。


すると、8羽のうち6羽の鳩が、餌を出されるまでの間に「特定の行動」を繰り返しました。


「特定の行動」とは何か。


例えば、餌が出る直前に頭を上げたり実験箱の中をひと回りしたりする、などの行動です。

鳩によって、その行動は違います。


スキナーは「まるで鳩は、その行動が原因で餌が出ると思い込んだかのようだった」と報告しました。

つまり、鳩は、餌が出る直前の自分の行動のおかげで餌が出た、と思いこんだというのです。


鳩の行動は、人間の「迷信」と同じメカニズムで行なわれたものだと考えました。

いわゆる「迷信行動」と呼ばれるものです。


スキナーの言う通り「迷信行動」を行ったとしたら、鳩はいったいどんな「きっかけ」でその「迷信」を抱くようになったのでしょうか。

研究によるとこれは、「偶然の経験」をきっかけにして始まることがあるようです。


例えば

最初に〇〇をしたら、うまくいった

〇〇をしたら、災難を避けることができた

こうした経験が「迷信行動」のきっかけになるというのです。

 

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猫のポール押し行動

スキナーに先だって1946年に、ガスリーとホートンも実験を行なっていました。

猫の実験」です。


箱の中央に棒(ポール)をぶら下げて、猫が「どの方向にポールを傾けても」ドアが開き、箱から出られるようにしました。

そして、箱の中に猫を入れます。

猫がポールを傾けた瞬間に設置したカメラのシャッターがおりて、写真を撮る仕組みです。


実験の結果、最初の2~3回の行動が終わるとどの猫も「ある特定の方向にだけ」ポールを傾けるようになりました。

傾ける角度は、猫によって違います。

しかし、どの猫も「どれか一方向」に傾きを定めるのです。


鳩の時と同じように、猫も、偶然にうまくいった(ように見える)行動があると、それが結果と結びついていると思ってその行動だけを繰り返すのです。

そして「他の方法を取らなくなった」ということです。


これは明らかに、猫の「思い込み」によるものです。

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成功者やスポーツ選手の「験担ぎ」

さて、人間の話です。

「迷信行動」は確かに奇妙ですが、人に思わぬパワーを与えることもあるようです。


成功者やスポーツ選手たちの中には、「験(げん)を担ぐ」ことを大事にする人が大勢がいます。

以下がその例ですが、みな個性的でこだわっています。

※ちなみに、彼らが何故そうするようになったのか、また、そうしたらうまくいったのかどうか、確かなことはわかりません。


推理作家:アガサ・クリスティ
「風呂に浸かりながら固い物を食べる」

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Wikimedia Commons


理論物理学者:アルベルト・アインシュタイン
「小さな成功をイメージしてから作業する」
※これは「験担ぎ」というよりも、彼の行動ルールやモットーだったのかもしれません。

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Wikimedia Commons


マイクロソフト創業者:ビル・ゲイツ
「馬の置物を収集する」

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Wikimedia Commons


鴻海(ホンハイ)精密工業(シャープを買収した会社):郭台銘会長
「重要な期日や場所などを、全て『縁起』を意識して決定する」

「お守りとして金色のマフラーを身に着ける」

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Wikimedia Commons

映画監督:黒澤明
「休日に爪を徹底的に磨き上げる」

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Wikimedia Commons

野球の神様:ベーブ・ルース
「試合前に『空樽』を見るとヒットが打てる、と信じた」
※実際に自費で手配した空樽を積んだトラックをわざと選手の前で走らせたところ、チームが絶好調になったといいます。

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Wikimedia Commons

プロテニス:ビヨン・ボルグ
「トーナメント中は決してヒゲを剃らない」

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Wikimedia Commons

プロテニス:セリーナ・ウィリアムズ
「試合中は同じ靴下を履く」
「独特な方法で靴ひもを結ぶ」

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Wikimedia Commons

プロ野球:鈴木一朗(イチロー)
「必ずスパイクを左から履く」

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Wikimedia Commons

バスケットボール:マイケル・ジョーダン
「ここぞという場面で舌を出して動かす」
「出身校であるノースカロライナ大学のショートパンツを、ユニフォームの下に履く」

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Wikimedia Commons


人の数だけ、「験担ぎ」の方法はあるでしょう。


それにしても、スポーツ選手の「験担ぎ」には、シビアな勝負の世界が想像できます。

勝つか負けるか、常にその瀬戸際に立たされている。

そんな心理状態においては、「験担ぎ」は、メンタル面で重要な役割を担っているのかもしれません。


精神を落ち着けて、やる気を呼び出し、自己のパワーを高めていく。

スポーツでも勝負事でも、ビジネスでも、人のメンタルは非常に繊細で影響されやすいことを示しているのでしょう。


人は思った方向にしか進まない」とよく言われます。


幸運を信じる気持ちは、プレッシャーに負けそうな自分をプラスの方向に押し出してくれるかも知れません。

逆に、嘆きや悲観的な心理状態が続けば、いつもそればかりをイメージしてしまい、マイナスの方向に向ってしまうのも、うなずけます。


やはり、「思い」と「行動の結果」には因果関係があるのです。

 

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一度抱いた「思い込み」に囚われる

経験による「思い込み」は、人を過去の結果に縛り付ける道具にもなるようです。


スキナーは、「本来、自由な意志というのは幻想に過ぎない」と考えていました。

人間の行動は、過去の行動の結果によるものだ」というものです。


例えば、こういうことです。

「〇〇をしたらまた損をする。効果がない。不愉快だ。だからもう二度とやらない」

「〇〇をしたら気分が良くなる。得をする。楽になる。だから何度でもやりたい」

ごく当たり前の考えや行動のように思えます。

 

うまくいったことを繰り返し続けるのは、生き残るためであり、失敗から遠ざかることです。

生き物にとって、当然の選択と言えるでしょう。


しかし、この思考パターンには、落とし穴もあるようです。

一度「悪い結果」を経験すると、それが本来は良い結果を生む行動だとしても、やらなくなってしまう。

あるいは、一度「良い結果」を経験すると他の方法を取らなくなってしまう。

「経験」によって、より広い可能性や真実から目を遠ざけてしまうということです。


「猫が一方向にしかポールを傾けなくなった」という行動そのものが、いい例です。

 

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ポールはどの方向にも倒れる

スキナーが言う通り、人は「経験」や「思い込みに」縛り付けられやすのでしょう。

自分が見つけたポール倒しの方向は、もしかしたら「思い込み」なのかもしれない。

ポールは、思いもよらない方向にも倒れるのかもしれない。

しかしこのことに気付くのは、たやすいことではないでしょう。

 

気持ちを落ち着かせていた「迷信」や「思い込み」を取り払ってみる。

真実だと思っていたことを、もう一度見つめなおしてみる。


それには、柔軟な精神と謙虚な心が必要です。

何度でもゼロに戻して考え直すという、辛抱強く素直な心が必要です。

 

果たして私たちは、物事に対してどこまで素直な目を持てるのでしょうか。

どこまで、視野を広く保てるのでしょうか。


「スキナーの鳩」や「ガスリー&ホートンの猫」は、動物の生態を通して人の行動を俯瞰して見るためのモデルにもなるのかも知れませんね。

 

 

ではまた!

 

 

(「猫の実験」については、「放課後等デイサービス ほーぷ」などより

https://mail.omc9.com/l/02ncIn/GQ5XZJ6g/

「勝負の世界、スポーツ選手のジンクス」については、「ジャパニーズカジノ.com」などよりhttps://mail.omc9.com/l/02ncIn/aq0AHv4r/

「有名人のゲン担ぎ・ジンクス」については、NAVERまとめ「あやかりたい!有名人・著名人の『験担ぎ』『ジンクス』のまとめ」などより
https://mail.omc9.com/l/02ncIn/mkTbsrDI/

抜粋・引用・加工しています)

 

 

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三日坊主がジョギング始めて6か月。体重が6kg減った!シューズが裂けた!爪が内出血をおこした!

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朝5:00の奇跡

コロナ禍のテレワーク(リモートワーク)で究極の運動不足になった僕は、この記事執筆時点から6か月前、55歳にして突然ジョギングを始めました。


それまで、ほとんど定期的な運動をしていなかった僕が、
8km~10km(最長12km)を走れるようになりました

そして何より、三日坊主の僕が6ヵ月の間「継続して」走っています。


僕にとっては、まさに奇跡の出来事です (^-^)

 

朝4:30に目を覚ますと、すぐさま全身にアドレナリンがいきわたり(自己イメージ)、着替えてシューズを履き、5:10には走り出す。

全行程、1時間15分ほどのジョギングです。

この顛末について詳しくは、ジョギング始めて3か月目の記事をご覧ください。

www.wakaru-log.com

 
ジョギングを半年続けたら体重が6kg減って、久しぶりに会う人に「痩せた?」と言われるようになりました(これまで、10人以上に言われています)。

それだけ、ジョギングを始める前はメタボ体形だったのでしょう。

今でもメタボ気味なことに変わりはないですが、劇的にマシになったようです。

特に「後姿、上半身(肩回り、胸回り、お腹周り)が、スリムになった」という証言を、よく聞きます。

きっと以前は、はるかにポヨンポヨンだったのでしょう。。


少しでも体が締まったとしたら、とても嬉しいことですが、ジョギングの目的はダイエットばかりではありません。

僕が望んでいたのは、体内の巡りを良くして気持ち良くなる、ということでした。

テレワークでガチガチになった体を、ほぐしたかったのです。

 

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運動不足というのは、かえって体が疲れるものです。体のあちこちが凝り、体内の循環が滞ってしまうからです。

多少の運動をした方が、体の疲れがとれます。

普段少しでも運動をしている人は、きっとそれが実感できると思います。


だから、外に出て体を動かし、気持ちのいい自然の空気を吸う習慣が実現したのが、一番の喜びなのです。


「ジョギングって、そんなにいいものなの?」と聞かれたら、

「いいものです。是非ウォーキングからでも始めてみてください」と答えます。



ところが・・・

 


始めて半年の間に、様々な問題が現れました。

 

筋力が足りない!

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走り出すと、足のどこかが痛い。

例えば、腿の裏側やアキレス腱の裏側あたりに、鈍い痛みが走ります

これは、始めてから3~4か月ごろまでよくありました。


走っているうちにだんだん痛みが取れていって、最後には痛みはなくなるので、おそらく、血が巡ってきて痛みが消えるか、途中で痛みが麻痺してくるのでしょう。

 

痛みの原因は、おそらく筋力不足だと思います。

何しろ、ウォーキングも軽い筋トレも何も準備せずに、いきなり走り始めたのですから、全くなまった体をいきなり動かしたわけです。

 

季節による気温の違いも、足の痛みと関係があると思います。

手がかじかむぐらいの寒い時期には、なかなか体にエンジンがかからず、ほぐれません。

まだ固い状態の体をギシギシいわせて走っているうちに、次第に温まって痛みも薄れてくる、という感じです。


継続して走っている間に多少は筋力がアップしたのか、筋力不足からくると思われる痛みは、徐々になくなってきました。


そしてお次にやって来たのは、足のマメ問題です (^^;)

 

血マメができて、シューズが破れた!

両足にマメができました。

いつのまにか、母趾球(ぼしきゅう)、つまり足の親指の付け根の丸っこいところの内側に、マメができたのです。

図で説明しましょう。

 

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マメは、走っているときに痛みはありません。

後になって足の裏を見ると、できているのです。

その後、マメはどんどん成長してきました。


そして、それとは別に、足の人差し指に血マメができてきました。

これも、走行中は痛くないので、後になって気付きました。


このように、走り始めて4か月ごろに、いろいろな症状が出てきました。

走行距離が8~10kmに定着してきたころです。


さらに、マメ、血マメと並行して、シューズの側面が切れてきました

切れたというより、側面の布地に裂けたような筋が入ってきたのです。

写真をご覧ください。

 

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ちょっと見づらいかもしれませんが、赤丸の中に、亀裂が走っています。

まだ、履き始めて4か月ぐらいしか経っていないのに・・・。

近所のスーパー(サミット)の2階にある靴屋(スポーツ専門店ではない)で買った、5,700円ぐらいのシューズです。


「やっぱり、毎日走っているとシューズもすぐ痛むのかな・・・」

そんな風に思ってましたが、周囲の人に聞いてみると、どうも4か月で切れ始めるのは早すぎるようです。


「(シューズが切れるの)ちょっと早すぎるのではないでしょうか?僕は1年はもちますよ」

以前の記事に登場したけんさん (id:academij) は言いました。


「いやあ、そこまで走りこんでいるんだったら、もっといいシューズ履きましょうよ!体悪くしますよ!

それに、(マメができるのは)シューズが足に合ってないかもしれません!専門店で買いましょう!」

これも以前登場した運動指導研究家のサミー先生 (id:sammy21) は言いました。


え?そうなの?

マメができるのは、シューズが足に合ってないからなの?

今履いているシューズは(走る距離・頻度に対して)安いの?

もっといいシューズを履かなければ、体を悪くするの!?


とうやら、マメ、血マメなどの原因は、ただ10kmという距離を走っているからではないようでした。

4か月程度でシューズが切れてくるのも、どうもおかしいようです・・・

おそらく、以下のことが原因と思われました。

  • シューズが足(や、走るボリューム)に合っていない
  • シューズの履き方が違う
  • 走り方がおかしい

まず、シューズ問題から解決しようと思いました。 

 

ようやくスポーツ専門店でシューズを買う

ジョギングを始めて4か月後(= 10km走るようになって)、ようやくスポーツ専門店にシューズを買いに行きました (≧▽≦)

B&D 渋谷店(東京都渋谷区)です。


平日の午前中だったためか、そしてコロナ禍の影響もあってか、店は空いていましたので、店員さんにじっくりと話を聞くことができました。

 

そもそも、「1kmを5分以上で走る場合と、4分以内で走る場合とではシューズの形態が違う」なんてことも、初めて知りました。

僕のジョギングのスピードは、時速8kmです。

1kmを7分10~30秒ぐらいで走るので、「セイフティー」というタイプのシューズを勧められ、いくつか試してみて、ミズノ WAVE SKYRISE というシューズを買いました。
これです↓


 

 

履いてみると、軽い、柔らかい、ソールがしっかりしている、という感触でした。

やっぱり、ちゃんと足のサイズを測って、アドバイスをもらってから買うと違うんだなあ、と思いました (〃▽〃)

 

走り始めのころの問題、継続時の問題

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このように、毎日走っていると、体調や道具にいろいろな問題が生じてきます。


走り始めのころに僕は、

コスチュームも技術も、最初はどうでもいいんです。有り合わせのものでいいのです。」

「まずやり始めてしまう。それから考えるのです」

と書きました。


確かに、何か行動を始めるときにはそれでよいと信じています。

それぐらい思い切って飛び出さないと、日常のルーチンから、そして「余計なことをしたくない」という自分の精神的な重力圏から、抜け出せないからです。


何事も、新しく行うことはそうかも知れません。


しかし、継続する段階になってくると、その勢いだけでは通用しませんでした。

続けてみて初めて見えてくる問題が、あったのです。

 

黒爪と呼ばれる爪下血腫(そうかけっしゅ)に!

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新たなシューズにしてから、これまであったマメは、みるみる無くなっていきました。

血マメも消えかけています。

やっぱり、シューズって大事なんだなあ!

 

ところが、ほどなくして、新たな問題が発生しました。


マメがなくなったかわりに、足の人差し指が内出血を起こしたようで、爪の中が黒くなってきたのです。


なんだこれは?

爪の中が黒くなっている。

不気味だなあ・・・

 

これもやはり、走行中に痛みはありません。

ネットで情報を見てみると、どうやら
爪下血腫(そうかけっしゅ)という症状のようです。

 

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読んでみると・・・

走っていて足の爪が過度に圧迫されると、爪の下に内出血が起きて爪が黒く見えます。

ひどくなると、爪が剥がれ落ちることもあります。

 

つ、爪が剥がれ落ちる!?


走り始めは大丈夫ですが、長距離を走ると出ることがある症状のようです。

果たして「10km」が長距離に入るのかどうかわかりませんが、僕の爪の症状はその通りなのです。


爪下血腫になった方のページもありました。
とても分かりやすく対応策も書いてあるので、紹介させていただきます。


こちら、tsutachi.coさんです。

繰り返す「爪下血腫(いわゆる黒爪)」対策。ジョギングシューズ シューレースの締め方を変えてみた | tsutachi.co

このページから、抜粋・引用させていただきます。

(前略)

治療という治療はしていません。
というより、爪の内部が出血しているので、「外側からなにか治療をする」という感じではありません。


仕方ないので放っておくのですが、数日たつと痛みもなくなります。
同時に徐々に爪の内出血が黒くなり、そのうち爪自体が少しずつ浮いてきて、ある日、下の爪が育ってきたころに上の爪はぽろりと取れる。
というのを繰り返しています。


古い爪が取れるまでには、大体半年~1年くらいの時間がかかります。
その間はひたすら黒爪とともに走るしかありません。

(後略)

 

爪がぽろりと取れる!!

ギャーッ!!ギャーッ!ギャーッ!ギャーッ!・・・
(エコー)


お、恐ろしい・・・(゚д゚;)


自分も、そういう状態になってしまったのか?

もっとも、このページの方も僕も、さして激しい痛みは感じないのです。

もし激痛で走れないのであればジョギングは中止するのですが、そうではありません。


走れてしまうのです。


そうして続けているうちに、僕の場合も少しずつ爪に黒い部分が広がって、悪化したきたようです


※自分の指を撮影したのですが、ちょっと掲載は見合わせます (^-^;)

 

爪下血腫(そうかけっしゅ)の対策

他のページをいろいろ見てみると、以下のような見解が多いです。

 

【爪下血腫の原因】

  • シューズのサイズが合ってない。
  • 疲れてくると、地面に引っかからないよう無意識に足指を反らせることでアッパーに擦れてしまう。
  • 浮指(うきゆび)」になっている。
  • あるいは、逆に地面を踏みしめようとして、指先がソールに当たってしまう。
  • 指同士が擦れてしまう。
  • そもそも、靴の履き方が悪い。紐のかけ方などで、しっかり靴を締めておらず、足がシューズの中で動いてしまう。
  • 体幹の姿勢が保てていないと、指で踏ん張って姿勢を保とうとしてしまう。そうすると、指に負担がかかりすぎる。
  • 爪を伸ばしすぎている。

つまり、シューズ、履き方、走り方、爪の状態など、様々な要因が考えられ、またそれらが複合的に絡んでくる可能性もありえる、ということのようです。


そして、いろいろなページで集めた情報をまとめると、爪下血腫の対策として考えられるのは、以下のようなことです。


【爪下血腫の対策】

  • 普通履く靴よりも、1サイズ大きな靴を履く
    ※ただし、これには異論があり、できるだけピッタリフィットして、つま先の前の余裕はギリギリの方が良いという意見の人もいました。
  • 靴ひもをしっかり締めて、足が遊ばないように(無駄に動かないように)する。
  • 5本指ソックスを履いて、指同士が擦れないようにする。
  • 体幹の姿勢を保持するために、疲れた後半にこそ体幹とお尻を意識した走りを心がける

 

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僕は、おそらくシューズが原因の可能性は低いので(足のサイズを測って買ったので)、以下3つのことに注意してみました。

  • 5本指ソックスを履く。
  • 紐をしっかり締める。
  • 最後まで、体幹の姿勢を意識した走りを心がける。

 

これらに気を付けて1~2週間ほど走った結果、爪の黒い部分が進行しなくなったように見えます。

また、(雨などで)1日でもジョギングを休むと、爪の悪化が止まって、少しずつ爪の色が回復してくるようにも見えます。

 つまり、たまには休むのも必要ということですね。

 

 

1年4か月後の追記:

この記事執筆以来、次第に爪下血腫治ってきて、いつの間にかそんなことも忘れていました。

ソックスもひもの締め方も、良い結果に結びついたようです。


しかし、1年4か月後に新しいソックスを履いたところ、再度血豆が復活してきました。


いったいなぜなのか?

以前と同じ種類の5本指ソックスなのに?


考えた結果、どうやら「おろしたてのソックスは少し滑る」のが原因だったようです(僕の場合)。


どういうことかというと、

ソックスを使い込んで何度も洗っていると、表面がケバ立ったり小さな毛玉ができたりと、表面がやや粗くなってきます。

しかし、買ったばかりのソックスはケバもなく、スベスベで滑らかです。

 

実は、この滑らかさがいけなかったのです!!(僕の場合ですよ)

 

おそらく、ソックスが滑らかなので、シューズの中で足が微妙に滑っているのだと思います。

そして、無意識に滑りを踏ん張ろうとしたり、あるいはシューズの中で足の指が動いてしまって、足の指に負担がかかっているのだと思います。

 

試しに、新しいソックスを履くのを中止して、これまでの古いけば立ったソックスに戻したら、何日かで血豆の進行が止まったではないですか!

 

いやあ、こんな微妙なところでも、やはり8~10km、時間にして1時間以上走ると、足への負担が変わってくるのでしょう。


そこで僕は、考えました。

あらかじめ洗いこんで、ケバ立たせておけばよいのではないか」と。

今、ジョギングではなく、まず普段の生活の中で新しく買った方の5本指ソックスを履いています。

ジョギングに使う前に、あらかじめ使い込んでおくためです。

何日か経ったころ見てみると、少しずつ表面がケバ立って来ました。

 

いいぞ!いい感じだ!!


もしこれを履いて問題がなければ、僕の「ジョギングではケバ立ったソックス履こう理論」は完成し、学会に発表することになるでしょう(なりません)。

 

 

ジョギング開始6か月目のまとめ

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この半年間で、ジョギングが、周囲の環境にも自分の体にも耳を傾けて、微妙なところも調整して続けていく必要があることを知りました。


体も気持ちも、両方において
です。


紐の結び方ひとつ、ほんのわずかな違いであっても、8km、10kmと走っていると、体への影響は大きいものになります。

季節の変化、気候の変化も敏感に感じ取りながら、注意深く、そして楽しく走りを続けたいと思います。


どうやら、最初の勢いだけのフェーズは終わっていて、今は次の段階を歩んでいるように思います (^-^)

 


この後、「ジョギング時の衝撃事件!」や「ジョギング時のマインド」などを書く予定でしたが、ことのほか長くなってしまったので、また別の記事に書くことにします!

 

 


 

僕がジョギングを始めたとき、3か月目、9か月目、1年目の様子はこちらです。

それぞれの時期に、それぞれのドラマがあります。

是非ご覧ください!

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ではまた次回!

 

 

当記事は、以下のサイトから抜粋・引用しています

tsutachi.co
https://tsutachi.co/blog/2015/10/kurotsume-3/

 



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生物時計(体内時計)は存在するのか?自分の1日のリズム「クロノタイプ」を知ってパフォーマンスを高めよ!

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あなたの1日はどんなリズム?

あなたの1日は、どんなリズムでしょうか。

何時に寝て、何時に起きていますか。

朝からパワーを発揮するタイプか、それとも深夜に冴えわたるタイプでしょうか。

 

多くの場合、1日のリズムは、仕事や活動のスタイルで決まってしまいますよね。

昼間に仕事があるなら、朝起きる。

夜勤や遅い勤務時間の場合は、午後や夕方に起きる。

仕事に向かうためのリズムです。


この、仕事に向かうためのリズムは、あなたの個人的な体調や欲求とは必ずしも一致しないかもしれません。

たとえ眠くても、時間には起きなければならないし、

活力が満ちていない時でも、きっと頑張らなければならないからです。

 

ところで、人の1日の活動リズムというのは、時代ごとに違っていたのでしょうか。

江戸時代、平安時代など、電気がない時代はどうだったのか。

夜はロウソクや行灯を灯したでしょうが、今よりずっと暗かったはずです。

 暗くなれば、眠るのも早かったのか。


文明が起こる前、荒野に住んでいたころは、日が沈んだら寝て、朝日が昇るとともに起きていたのでしょうか。

 歴史を紐解けば、その時代の環境に応じた活動リズム、時間の刻み方が、わかるかもしれません。

 

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一方で、人間の生活サイクルとは別に、

生き物全般には生まれつき「時を刻む能力」がありました。


動物、植物、さらに微生物にもです。


何らかの異変で、たとえ光がない真暗な日が続いたとしても、闇がない昼間が続いたとしても、「昼夜の明暗の変化」にかかわらず、時を刻む能力は稼働してきました。


その能力とは「生物時計」です。

 

 体内の時計中枢はどこにあるのか

「生物時計」とは、生物に備わっている時間を測定する機能です。

体内時計」「生理時計(physiological clock)」とも呼ばれています。


「生物時計」は「1日」などの時間を刻み、睡眠、覚醒、血圧や体温の調整、ホルモン分泌など、多くの重要な生理現象を管理しています。

生命活動に欠かせない大事な仕組みですね。

もちろん、生物自身はこの「時計」の存在など意識していないでしょう。

 

「生物時計」は全身にあると言われていますが、

ほ乳類では、その「中枢部分」は、脳の左右の視神経が交差する少し上にあるそうです。

視交叉上核(しこうさじょうかく)」という、1mm四方ぐらいの小さな器官です。

これが、体内の周期リズムを統括しているのです。


まるで、精密機械のようですね。

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視交叉上核(しこうさじょうかく、英: suprachiasmatic nucleus)
Wikimedia Commons

 

紫外線を避けるためにできた「時計」

生物時計は、動物にも、昆虫にも、植物にも、そしてカビなどにも備わっています。

「微生物にもある」ということは、「進化の最も早い過程」で存在していたということです。


原初の時代、生命が昼間の有害な「紫外線」を避けて、夜の時間帯にDNAを複製するようになった。

このために「昼夜のサイクル」つまり「時計の機能」を獲得した、と考えられています。

紫外線は、太古より生命にとって危険なものだったのですね。


「生物時計」の種類は、実に様々です。

周期の長いものでは「植物の開花」「魚の回遊」「鳥の渡り」など、季節単位や年単位の時計です。

壮大な時計ですね。


周期の短いものでは「脳波」や「心臓の拍動」など。

あるいは、食事の前に胃酸や分解酵素が準備されることも、生物時計の働きと言われています。


そして、生き物の「寿命」というもの。

これも、広い意味では生物時計の働きと考えられています。

一回限りで、繰り返すことはありませんね。

 

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生物時計が狂うとき

生き物の体を守る大事な「生物時計」は、狂ってくることがあります。

どういうことでしょうか。


生物時計の中でよく知られる機能が、

サーカディアン・リズム(概日リズム)(circadian rhythm)

と呼ばれるものです。

「概日(がいじつ)」とは、「だいたい1日」「おおよそ1日」という意味で、「概日リズム = ほぼ1日間のリズム」ということです。


「概日リズム」は、正確な24時間ではなくおよそ25時間、平均的には24時間15分ぐらいの長さだそうです。

この「だいたいの1日」と、正確な24時間との間に起こったズレは、「光を浴びる」ことによってリセットされます。


もともと生物時計は、昼夜の明暗にかかわらず成り立ってはいるのですが「ほぼ1日」の区切りによって、ズレてきます。

このズレた分を、自然界の光である日照の有無によって補正しているのです。


「朝起きたら、朝日を浴びることが大切」などとよく言われますが、これは全くもってその通りなのです。

光によって、ズレた時計の針を直すのですね。

 

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「生物時計」が狂ってくると、体調も狂ってきてしまいます。

「時差ボケ」もその一つです。

徹夜や寝不足が続いたり、昼夜逆転の生活が続くのもそうです。

24時間営業の店があり、テレビやインターネットで夜更かしするような現代の生活環境自体が、この背景にあるでしょう。


「生物時計」が狂った生活が続くと、当然ながら体のリズムは狂ってきて体調不良や、うつ病になったりする可能性も出てきます。


ちなみに、「生物時計」のズレを修正する問題は、地球上だけではなく、宇宙飛行士の生活でも考慮されています。

変化の乏しい宇宙船の中に、明暗のサイクルを模した環境を作ることによって、宇宙飛行士の健康を維持する工夫が考えられているのです。

 

80%の人たちは「生物時計」に反した生活を送っている

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アメリカ・コロラド大学助教授のセリーヌ・ベッター氏は、こう説きます。

「80%の人たちが、それぞれの体内時計(生物時計)に反した形の勤務スケジュールで働いている」


多くの人の個々の生活リズムと実際の仕事のリズムが、必ずしも一致していないであろう、ということです。


人には、「個々に最適の就寝時間や起床時間がある」ということが、最新の研究で判明しているようです。

そのタイミングは、人により少しずつ異なっていて、個々が持つ時間的なタイミングの傾向を「クロノタイプ」と呼びます。


例えば「朝型」や「夜型」などの、個々の1日の活動の指向性のことですね。

この「クロノタイプ」は、生物時計に強く影響されているのです。


個々の「クロノタイプ」に反した状態、例えば、体が睡眠を欲している時に眠らなかったり十分な睡眠をとらなかったりすると、

疲労が起こり、仕事での不調や間違いなどが起こりやすくなると言われています。

実際、多くの事故がこの原因によって起きている、と考えられているようです。

 

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デンマーク人のカミラ・クリング氏は、こう説きます。

各自のエネルギーが最も高まるのはいつか、

精神的なピークはいつかといった問題を考慮することは、実に理にかなうことだ

これは、誰もが実感できるのではないでしょうか。


エネルギーの高まるときに、肝心な仕事をしていない。

眠くて朦朧としているときに、重要な作業をしなければならない。

これは実に効率が悪く、当人にとっても辛いことです。

生産性の観点から見ても、明らかにマイナスです。


とはいえ、実社会において、個人のリズムと仕事のリズムとの調和をとれるのかと問われれば「なかなか難しい」といえるでしょう。

特に日本では、もし「仕事が自分のリズムに合っていません」などと言えば、その申し出は無視されるか「では、やめていいよ」と言われるかもしれません(;^_^)

 

個人のペースを生かそうとする海外

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海外では、この問題を考慮して、従業員の就業時間を個々のリズムに合わせているケースがあるようです。

それによって、個人の健康を守り、生産性を上げているのです。


もちろん、個人個人で何時間もスケジュールを変更する、というわけではありません。

いくら何でも、それでは組織的な仕事は成り立たないでしょう。

せいぜい、1時間か2時間ずらして就業を開始する、という程度の調整です。


しかし、それだけでも、生産性アップに大きく貢献しているようです。

人間が働き方のルールを守るか、働き方を人間に合わせるか

そうしたことがよく考えられるようです。


現在、コロナ禍があり、テレワークが注目されています。

近い将来、日本でも、就業時間や就業ペースが見直される日が来るのでしょうか。

いや、既に見直され始めているのでしょうか?


しかし、「クロノタイプ」に基づいた見直しまでをするには、日本人のライフスタイル、価値観などがもう少し変わっていかないと実現できない気もします。

なぜならば、経営者側の問題はもちろんのこと、雇われる側の意識も変わらなければならないからです。


「自分のリズムに合っていなくても、とりあえず今のままでいいや」と考える雇用者も少なくないもしれません。


人間は、変化を嫌う生き物です。

できるだけ現状を維持したいものです。


また、特に日本では、みんなと違うペースで仕事をすることに、罪悪感や居心地の悪さ、さらには同調圧力を感じるケースもあるでしょう。

多少の不都合はあっても「今のままでいいよ」「みんなと同じでいいよ」という声は、意外と多いかもしれませんね。

 

自分の「生物時計」を知る

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多くの人は、自分の身体リズムがわかっていない」と、カミラ・クリング氏は言います。


自分は何時に起きたら調子が良いのか。

1日の中で、自分はいつ頃にパワーが発揮されるのか。

集中力が落ちるのはいつなのか。


こうした自分の「クロノタイプ」や活動リズムを知り、その性質を生かす工夫をすることは、とても興味深いことです。


実際に、自分の調子を調べてパフォーマンスを高める試みをしている人は、たくさんいます。

その試みは、必ずしも仕事に直結しないことも多いでしょう。


例えば、勤務時間前、早朝の集中力の高い時間帯に自分自身のための勉強をする。

様々なプランを練る。

アイデアを出す。

朝日が上がる時間を狙って、ウォーキングをする。

仕事の後、必ずひと汗かけるスポーツをして、心身ともにリセットする。


環境や常識に任せるだけではなく、自ら自分固有の活動リズムを知り、それにマッチした行動を見つけ、実行してみる。

そうすることが、自分の中の思わぬパワーを引き出すことにつながるかもしれません。


そう考えると、「生物時計」とは自分自身のペースそのものであり、自分をパワーアップしてくれる「アドバイザー」なのかもしれませんね。

 

 

ではまた!

 

 

(生物時計、概日リズムについては Wikipediaから

https://bit.ly/3hTwY1n

https://bit.ly/3hPMpaN
「クロノタイプ」の海外の見解については、朝日新聞GLOBE+の記事より
https://globe.asahi.com/article/12088036

抜粋・引用・加工しています)

 

 

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「割れ窓理論」で荒廃を食い止める。犯罪防止やビジネスの立て直しに不可欠な意識改革はこれ

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空地の前でタクシー運転手がしたこと

僕はこれまで、7回にわたり引っ越しを経験しました。

いずれも東京23区内の引っ越しです。

7回にわたって物件を転々としたのですが、その中の一つに、古い団地のアパートがありました。


なんと、昭和40年(1965年)に建てられた、団地の中の一棟。

新築当時は最先端の建物だったのでしょうが、今ではエレベーター無しの5階建で上り下りがしんどいです。

鉄筋ですが、窓の建てつけも悪く、相当古びていました。

居住者は、新築当時に入ったと思われる人たちが多く、全体に高齢化していました。

※この記事執筆時点で、すでに10数年前に取り壊されています。


アパートの前には川が流れ、その周辺は広々としていました。

ただ、川といっても魚が泳ぐようなきれいな川ではなく、どぶ川に近いです。

広々といっても、有刺鉄線で囲われた空地や駐車場のある、ちょっと寂しい雰囲気の一角でした。

きっといつか再開発されて、きれいになるんだろうな。

そんなイメージのエリアでした。


さてその周辺では、車通りが少ないのをいいことに、タクシーがよく昼寝のために路上駐車していました。

川沿いや空地の横に車をとめて、昼寝するのです。

当然、駐車違反です。


それだけならまだよいのですが、運転手が、車中で食べたコンビニ弁当のカラやタバコの吸い殻などを、その空き地の脇に捨てていました。

ゴミ捨て場でも何でもない、普通の路上なのに、です。

すぐ横に(僕がいた)アパートがあって人が住んでいるのに、です。

一体何を考えているのか。

 

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そして、さらなる事件は起こりました。

車から降りたタクシーの運ちゃんが、何とそこで小用を足しているではないですか。

真昼間に、大の大人が住宅地の路上で、堂々と小〇をしている!


近くには公園もあり、その公園にはトイレがあります。

タクシーの運転手なのだから、当然ながら、どこに車をとめやすいとか、どこに公園があるかぐらいは知っているはずです(僕は昔、宅配のバイトをしていたことがあるので、想像がつきます)。

なのに、すぐそばにある公衆便所ではなく、わざわざ道でしたのです。


僕は「おい!!」と叫ぼうとしました。

警察に通報しようかと思いました。

だって、自分が住んでいるアパートのすぐ横でされてるんですから、たまりません。

しかし運ちゃんは、あたりまえのことのように、すぐにタクシーに乗って行ってしまいました。


これは、一体どういうことなのか。

その運ちゃんが、「どこでもドア」ならぬ「どこでも便所人間」だったのか。

単に魔が差しただけだったのか。

いやいや、そんな態度ではなかった。

当然のような表情でそれを行っていた。


怒りと悲しみを乗り越えて考えたところ、僕は次の結論に達しました。

そこが「そうしてもよいと思われた場所」だったからです。

 

「割れ窓理論」とは何か

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「割れ窓理論(ブロークン・ウィンドウ理論:Broken Windows Theory)」という考え方があります。

アメリカの犯罪学者であるジョージ・ケリングが考案した、次のような理論です。

  1. 建物の窓が壊れているのをそのまま放置すると、それが「誰もその地域に関心を払っていない」というサインになる。
  2. そして、ゴミのポイ捨てなどの軽犯罪が起きるようになる。
  3. 汚れてくるにつれ、次第に住民のモラルも低下して、地域の安全確保に協力しなくなり、それが環境を悪化させる。
  4. 最終的には、その周辺で犯罪が多発するようになる。


なんと・・・!

これ、思い当たることがありますよね?

その場所が汚いから、感覚がマヒしてくるのか。

感覚がマヒしているから、その場所が汚れるのか。

どちらが先かはわかりませんが、確かにそういうエリアはあると思ます。


そして、僕の住んでいたアパートの隣の空き地の前の道が、きっとそうだったのです。

そこは、もともとゴミが溜まっていたわけでも、道が崩壊していたわけでもありません。

普通の道です。

しかし、どぶ川の横有刺鉄線や人気のない雰囲気ガランとした空間、そして古い団地アパート

そうした総合的な状況が、きっと何らかのサインになっていたのでしょう。

ここにゴミ捨ててもいいよ、小〇してもいいよ!」と。

 

普通の場所が「ゴミ捨て場」になってくるプロセス

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よく、森の中や雑木林、空き地などに、違法に粗大ごみが捨てられていることがありますよね。

そこは、最初から汚れた場所ではく、最初はただの雑木林や空き地だったはずです。

そこにあるとき、フックになるゴミが投げ入れられたのに違いないのです。

もちろん、最初に捨てた人にそんな意図はないでしょう。


しかし、その最初のゴミを見た別の人が、「あ、ここは捨てていいんだな」という感覚になって、ゴミを捨てる。

またそれを見た人が「あ、ゴミ捨て場だ」と思って、ゴミを捨てていく。

やがて、粗大ごみの処理に困った人が「あ、あそこの空き地に捨ててこよう」と思って、わざわざその空き地に粗大ゴミを捨てに行く。

 
そういう流れは、想像に難くありません。

 

軽微な状態からしっかり片付けていく

「割れ窓理論」は、荒廃せずによい環境を維持させるため、あるいは無法地帯となってしまった場所を改善するための考え方です。

具体的には、次のような措置です。

  • ゴミはきちんと分類して捨てるなど、一見無害に見えたり軽微な秩序違反であっても、取り締まる
  • 警察によるパトロールや交通違反の取り締まりを強化していく。
  • 地域の人々も警察に協力し、秩序の維持に努める

 

これを見ると、そのエリアが犯罪エリアになる過程と、それを予防・改善する過程に、共通して言えることがあります。

それは、「地域の人々の意識」です。

地域の人たちが関心を示さなくなってきて、荒廃していく。地域の人たちのモラル自体も低下してくる。


普段ちゃんと掃除をする人であっても

「汚い場所では気を使わなくなる」

「汚い場所に慣れていってしまう」

「関心を失っていく」

とすれば、おそらく、

その場所の状況に人間が影響されてしまっていますよね。

広い意味で、「順応してしまう」ということでしょうか。


場所が汚れる→人の関心が薄れる→さらに汚れる、の悪循環です。

 

「割れ窓理論」で犯罪の抑制に成功

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「割れ窓理論」を用いて、犯罪の抑制に成功した例が、国内外にあります。


1994年に、アメリカのニューヨークのルドルフ・ジュリアーニ市長が「割れ窓理論」を応用した対策にのり出しました。

ニューヨーク市内の落書きや違法駐車など、軽犯罪を徹底的に取り締まったそうです。

すると、5年間で犯罪の認知件数が、殺人が67.5%、強盗が54.2%、婦女暴行が27.4%減少して、治安が回復したそうです。


驚くべき効果です。


こうしたことは、日本でも行われています。

2001年に、札幌中央署が「割れ窓理論」を「違反駐車」に置き換えて、「すすきの環境浄化総合対策」として犯罪対策を行ないました。

北海道内最大の歓楽街である「すすきの」で、駐車違反を徹底的に取り締まったのです。

すると、路上駐車が対策前に比べて3分の1以下に減少し、同時に地域ボランティアとの協力による街頭パトロールなどの強化によって、

2年間で犯罪を15%減少させることができたということです。

この後、全国各地の警察署からヒアリングなどが活発化したそうです。


いずれのケースも

「ここは汚い場所ではない」

「違法駐車してよい場所ではない」

「軽犯罪であっても、許される場所ではない」

という強い意識が、人々に浸透したのでしょう。

 

スティーブ・ジョブズも応用していた「割れ窓理論」

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「割れ窓理論」は、ビジネスでも応用されてきたようです。


ディズニーランドやディズニーシーです。

敷地内のささいな傷もおろそかにせずに、ペンキを塗り直し、壊れた箇所の修繕を頻繁に行うことが、徹底されているようです。

これによって、従業員のマナーもゲストのマナーも向上させることに成功している、と言われています。

 

日本電産の永守社長は言います。

儲かっていない会社にはいくつか共通点があるのです。

一つは社員の士気が落ちています。

会社の士気が落ちていると当然工場は汚いですよ。事務所も汚い。

電話の応対がいいかげん。マナーがなっていない。

つまり6Sができていないのです」

※6Sとは、整理、整頓、清潔、清掃、作法、躾の6つのS。



そして、かのスティーブ・ジョブズも「割れ窓理論」を利用したようです。

スティーブ・ジョブズがアップルの改革でまず対処したことは、社内の空気を一新することだったそうです。

彼が復活する前のアップル社内は、遅刻があたりまえになっていたり、社内にペットを持ち込んで犬と遊んでいる社員までいたという始末。

ペットの持ち込みを禁止するなどを初めとして、ジョブズは仕事環境を徹底的に変えていったそうです。

そうしたことによって、社員たちの意識を変えたのです。

 

自分のデスクに目を向ける

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思えばこれは、小さなところでは、自分の部屋やデスクにも言えることですね。


いつまでも置きっぱなしの書類があったり、読むことのない本がただ飾ってあるだけ(デッドスペース)、PCの裏側で綿ぼこりが成長する (^^;)、キーボードは打つ場所以外埃が定着していく・・・。

書き出したらキリがないほど、荒廃した風景です(はい、僕の部屋およびデスクです:涙)。


これでは、いいアイデアは浮かびません。

仕事がはかどるはずがありません。

もちろん、何もかもきっちり考え過ぎては、苦しくなってしまうでしょう。

しかし、そこが仕事場であるならば、最低限やるべきことはあるはずです!(自分に言っています ( ;∀;) )


僕はまず、自分の部屋の中で軽犯罪が発生しないように、つまり、部屋の汚れとともに自分の心が荒廃してしまわないように、ちょっと取り締まってみることにします。

はい、自分をです (^^;)

 

 

ではまた次回!

 

 

当記事は、以下のサイトから 抜粋・引用・加工しています
Wikipedia(割れ窓理論)
https://bit.ly/3fjKzNI
刑事告訴・告発支援センター
http://www.xn--4rra073xdrq.com/r_ware.html
NAVERまとめ
https://matome.naver.jp/odai/2142963921231838201

 



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三日坊主がジョギング始めて、3か月後に12km完走!スロージョギングやLSD(ロング・スロー・ディスタンス)とは

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いきなり走り出した日

その日僕は

スウェットの上下と、ごく適当な運動靴といういでたちで、世田谷区「砧(きぬた)公園」のサイクリングコースに立っていました。

1周が1.7km。

そのコースは、自転車の周回コースであるとともに、ジョギングコースでもあります。


僕は初めて、ジョギングをしにやって来たのです。


よし、まず、あの松の木のカーブまで走ろう。
そしてカーブに着いたら、一度休もう。


あそこまで100mくらいかな。


なにしろ、何年も走ってないからな・・・いや、何十年もか。 
自分は50代のオッサンだ (^^;)・・・油断しないでいこう。
まあでも、短い距離なら少しぐらいは走れるだろう。


行くぞ・・・
よーい、スタート!!


僕は、いきなり走り出しました。
体が重い!足腰がガタガタする!
ハー!ハー!ゼー!ゼー!


息が切れて、足腰よりも先に心肺が悲鳴を上げました。
ゆっくり走っているつもりなのに。
だめだ!苦しい!


思わず止まって前を見ると、目標の松の木はまだ先です。
スタートしてから、ほんの15秒ぐらい?
50mぐらいしか進んでいません。


苦しくて続かない。
僕は諦めて、歩き始めました。


ハー!ハー!ハー!
いつまでたっても荒い息が収まらない。
コースの距離が、急に10倍くらいに感じられました・・・


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それから、3か月後。

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コンプレッションウェアのTシャツと、短パンに身を包んだ僕は、

左腕にはめたアームバンドのスマートフォンを90度回転させて

Nikeのランニング距離GPS測定記録アプリをタップします。


アプリがカウントを開始します。
3・・・2・・・1・・・スタート!
僕は、ゆっくり走り始めます。


5月の朝5:30。

朝もやと、鳥の声。
木々の間から、キラキラと差し込む朝日。

甘い木のにおい、土のにおい、朝露に濡れた草。
湿ったアスファルトの道を、ゆっくりと走ります。


ちょっと眠いけど、徐々に体にエンジンがかかってきます。
橋を渡り、東名高速の脇を走り、木々の生い茂った砧(きぬた)公園の外周を走ります。


そろそろ7kmぐらい走ったか。
スマホの測定記録アプリを見ると、7.32km。


このまま8kmで終わるか、それとも今日は初めて12kmまで行ってみるか。
まあ、後で調子を見て決めればいいや。
ともかく、この気持ちいい走りを、もう少し続けよう・・・


そうです。

これは、50mのジョギングでへばったオッサンである、僕そのものです。
あれから3か月、ずっとジョギングを続けていたのです。


仕事や、よほど重要なことでない限り、すぐに飽きてしまう、つまり三日坊主のこの僕が、3ヵ月間、雨の日や休足日(※)以外毎日ジョギングを続けてきたんです。

※休足日:走りの休日がそう呼ばれているようです。


そしていつの間にか、50mどころか、12kmという距離を走っていました。
12kmというと、僕のペースでは1時間30分走り続ける状態です。
たった15秒のジョギングが、1時間30分に伸びたのです。

 

 

 

座りっぱなしのIT土方、その生活の危険性

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僕がジョギングを始めたのには、理由がありました。


コロナ禍での、リモートワーク、テレワーク、在宅ワークの影響!
・・・というわけではなく、もっと以前からの個人的な理由です。


僕は、ここ10年以上テレワークをやっていますが、大きな悩みの一つとして「運動不足」がありました。

朝から晩まで、座りっぱなしでパソコンにはり付いている、いわゆる「IT土方」。

週に1回か2回、ジムに行くこともありますが、1日の大半を座り仕事で過ごしています。

 

この生活は非常に体にこたえます。


極限に代謝が悪くなり、肩や背中、関節が凝ります。
かつて、五十肩になったこともあります。
いや、それどころか、長時間の座り仕事は寿命を削るという研究結果も出ているようです。


また何よりもまずいのは、体のだるさから精神的な停滞に陥ることです。
つまり、やる気がダウンすること、エネルギーがダウンすることです。

人間は、体調と精神が結びついていますから、特に仕事では、これが一番恐ろしいのです。


体がだるくなって気力が落ちてくると、集中力が途切れてボーっとし、気付いたら仕事と関係ないネット動画を見ている・・・。


やばい、これではいけない!


いてもたってもいられなくなり、何の準備も覚悟もなく、ウチから徒歩7分の所にある砧公園に、いきなり出かけたのです。

そのときの顛末は、こちらをご覧ください↓

www.wakaru-log.com


そして冒頭の通り、最初は50mも走れず、すぐに息が上がって歩いてしまいます。

昔、25年以上にわたって喫煙者だったことも、心肺機能に影響しているかもしれません。


少し走ってはゼーゼー!
しばらく歩く。
そしてまた走る。
これの繰り返しです。


しかし同時に、これが、
たったこれだけの、走りとも歩きともいえない動きが、実はとても気持ちよかったのです!


思い通りに走れないけど、苦しいけれど、でも気持ちいい。


始めは、1.7kmの周回コースを1回だけ「歩き + 走り」で回りました。
それだけで、翌日は筋肉痛になりました(笑)。
よほど体力が落ちていたのでしょう。


そのまま痛がりながら、その次の日も、さらにその次の日も、「歩き + 走り」を続けました。

歩きと走りを混ぜているので、自分で勝手に「ジョグウォーク」と呼んでいました。

 

走りの先駆者がいた

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僕には、ジョギングの目標になる人がいます。

けんさん (id:academij) です。

彼は、ビジネスの面でも大変お世話になっている方ですが、ジョギングはこの道何年のベテランさんです。

例えば、地方出張の際にも旅先でコースを策定して、早朝に7km~14kmなどの距離を走っている人です。
https://www.6aca.net/entry/osaka-sakura

別荘で余暇を過ごすときでさえ、別荘の近所を走ります。
https://www.6aca.net/entry/kusatsu-jogging-map


彼のジョギングの話を都度聞いてきた僕は、いつか自分も走れたらなあ、と思っていたわけです。

しかし、「走れたらなあ」では、走らないんです。

人間は・・・いや僕は、そんな弱い動機では動けません (^^;)

心臓を貫くような、とどめをさすような強い動機がないと(笑)、石のように重い腰を上げることはできないのです。


今回、とどめは
このままだと、走らないで人生が終わる
と思ったことです。


そうです。


何事も、いったん後回しにすると、二度と手を付けることはない。

そのうち、思い立ったことも忘れてしまい、アイデアは埃をかぶり、棚の奥深くで永遠に眠ることになります。

そうしたことが、年齢を重ねるにつれて、より強い実感になっていたのです。


僕にとっては、不健康な状態が続くこと、そして体調によってモチベーションが左右されることに、もうこれ以上のんびり待っている暇がなかったのです。


考えていてはいけない!
行くしかない!


そうして、公園に飛び出したわけです。

 

三日坊主の自分が、なぜジョギングを続けられるのか

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しかしそれでも、まさか自分がジョギングを続けるとは、思っていませんでした(笑)

走り出した時、これが続くとは、これっぽっちも思っていなかった。

その理由は、僕が「三日坊主」だからです (^^;)

 

継続する、習慣化するということが、自分は苦手だと思っていたのです。


仕事の場合は別ですが、やってもやらなくても良いこと、そして多少負荷がかかるようなことは、よほど必要に迫られない限り、続きません。


なぜなら、やめても誰も困らないからです。


「ジョギング、続けてるの?」
「あ、ジョギング?
うん、ちょっと腰痛めちゃって、しばらく中止にしてるんだ」

などと、どうにでも言い訳できる世界です。別に腰など痛めていなくても。


だから続きません。


ところが意外にも、今回のジョギングは続いています。

いや、続いているどころか、想定外の長い距離を走っていて、さらに、距離は少しずつ伸びています


 つまり進化しているのです。


これは何故なのか?
自分なりに考えた理由は、以下の点です。

 

1.走るのが気持ちいいから

とにかく、公園周辺を走ることが気持ちいい。

勝手な分析としては、木や草の匂いをかぐことで自然に触れて癒しや活性化になり、セロトニンが分泌されている。

セロトニンとは、継続的な運動や日光を浴びることで分泌され、精神の安定や頭の回転、直観力を上げ、やる気や幸福感につながる「幸せホルモン」であると言われています。

参照:医療法人社団 平成医会

これらの効能からなのか、早朝に走ること、木々の間にいることが、非常に快感なのです。

気持ちいいことは、自然と続きますよね。

 

2.達成感があるから

50mが100mに、500mが1kmにという具合に、あるいは、今週は3日走った、4日走ったという具合に、少しずつ走行距離や回数が伸びていくこと。

それらが、自分にとって達成感になるのです。

達成感になると、脳は喜んで、もっとやろうとします。
これは、以下の記事で書きました。

www.wakaru-log.com

 

3.目標とする人がいるから

前述のけんさんや、後述のサミーさんなど、同じように走っている近しい人がいることは、大きな要因です。

実際に一緒に走っているわけではありませんが、自分の目標となり、励みになります。

彼らの存在が、「負けるもんか」という気力も起こしてくれます。

また、先駆者がいるとき、人は「そこまではできるのだ」という意識をもってのぞめるのです。

これは以下の記事で書きました。

www.wakaru-log.com

 

4.習慣になったから

体にとっては、これが一番大きい理由かもしれません。

ジョギングのため朝4:45ごろに起きるのですが、目覚ましをかけていても、目覚ましが鳴る前に目が覚めます。

眠い目をこすりつつも、体はすぐに運動の体制に向かいます。
神経が目覚めて、無意識のうちに走る準備を始めています。


つまり、ジョギングが習慣化しているのです。


この習慣化は、意外にも始めてからほんの2~3日でついてしまいました
自分にとって非常に意外なことでしたが、おそらく、走るのが気持ち良いからだと思います。

再び快感を得たいがために、脳と体がすぐさま習慣化してしまった、というわけです。


そしてこの「習慣化」が、普段の作業にも非常に良い影響を与えています

 

5.継続することの価値が、身に染みてわかっていたから

特にここ数年のことでしょうか。

ビジネスでも普段の生活でも、思い込んだら継続することの価値を、僕はようやく身をもって理解してきました。


逆に言えば、継続できないから結果も出せなかった、いつの間にか消滅して何も残らなかった、というケースを数知れず見てきました。

もちろん、自分の行動においてです。

だから、一つのことが実を結ぶための継続がいかに大事か、走りながら感じていたのです。


ジョギングの習慣は、結果的に人生の財産になっています。

 

プロのアドバイスを聞く

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ところで、走っているとき、足が痛い、体が痛い、ということもよくあります。
筋肉痛のこともあれば、原因不明の痛み(おそらく疲労など)の場合もあります。


そんな時、僕は専門家に相談してみました。
運動指導研究家のサミー先生 (id:sammy21) です。


この方は、ジョギング中の痛みについての対処法を、教えてくれました。

痛みがあれば、無理せずに歩いたり休んだりすること、ストレッチや筋トレをよくして、筋力アップすることが大事、というアドバイスをいただきました。

「せっかく走りたいと思っているのに、小さなことでやめてしまうのは惜しい。不調があったとしても、それとうまく付き合って続けていきましょう」

木を見て森を見ず、にならないようにしましょう」

これが、彼の考え方です。


サミー先生には、Zoomミーティングのライブ映像でストレッチや筋トレの方法などを教えていただき、その調整方法を今でも僕は続けています。


彼の理論と実践から導き出した、初心者のためのマラソン指導プログラムはこちらです。
「はじめてのマラソン完走プロジェクト!」


また、マラソンのことだけではなく、運動全般のことで質問相談を受け付けているようですので、興味がある方は問い合わせてみてください。

僕の場合もそうでしたが、親身になって答えてくれると思います。
sammyacad★gmail.com
※「★」を「@」に置き換えて下さい


じゃあ、ジョギングを勧めるの?

ここまで読んでいただいた方の中には、「じゃあ、あなたはジョギングを勧めるの?」と思う方がいるかもしれません。


「そんなにいいのなら、自分もやってみようかな」と。

はい、あなたにズバリ言います。


すごくいいので、やってみてください。


ウォーキングから始めても、もちろんOKです。

ただし、僕が思うに「気持ちいいところまでを続ける」ことが大事です。

最初から無理をして、張り切りすぎて体を痛めたり、苦しさだけしか残らないようなやり方では、なかなか続かないでしょう。


サミー先生からは、こう教えていただきました。
「長くゆっくり走るのがいいんですよ」

 

「スロー ジョギング」や「LSD(ロング・スロー・ディスタンス)」とは?

これは、「スロー ジョギング」や「LSD」という考え方に通じているようです。


LSD(エルエスディー)とは、サイケデリックな幻覚作用のある、1960年代にビートルズもやっていたことのある薬物で、それによって名曲を生み出したこともあるとされているものですが、その薬物のこととは違います (^^;)

(ビートルズは大好きです)


ここでいうLSDとは、
Long Slow Distance(ロング・スロー・ディスタンス)
で、ランニングやサイクリングにおける、有酸素持久力トレーニングの形態のことです。


「Long=長く」「Slow=ゆっくり」「Distance=距離」です。


スピードを上げて走るよりも、ゆっくりと長い距離を走ることで、体に様々な良い影響がもたらされる、というトレーニング方法のことです。

参照:Wikipedia


実際、僕は初め、けっこうスピードを出して走っていました。
無意識に「距離を伸ばしたい」と思って、気が急いていたのかもしれません。


しかし、そもそも始めたばかりの素人ですので、技術も体力もありません。
すぐに疲れてしまって、3kmぐらいでへばっていました。


そこで、サミー先生の言う通りにゆっくり走る方法に切り替えたら、余計な負担が消えて、次第に距離が伸びてきたのです。

もちろん、続けるうちに自分の体力もついてきたのでしょう。

 

ジョギングのメリット、デメリット

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僕が今走る速度は、時速8km

1kmを7分30秒前後で走ります。

「歩くよりちょっと早い」ぐらいの印象です。

実際に、歩いている人を追い越そうとしても、なかなか距離が縮まりません(笑)


「ジョギング」というイメージから想像すると、かなりゆっくりなペースかもしれませんが、サミー先生によると、このスピードはジョギングとしてそんなにスローペースではないそうです。


スピードを変えると(例えば、ちょっと速くすると)、慣れない場合には、10kmも走ったときに筋肉痛になったり、故障が起きたりすることもあり得るとのこと。

やはり、1時間休みなく運動を続けるわけですから、少しの負荷の差でも、体への負担が大きく増えるのだと思います。


ですから、僕は「LSD」で続けています。
あなたにも「LSD」をお勧めします。
長くゆっくり走るのです。


苦しくなったら休み、歩いて、また走り、気持ちいいところまでを持続する。

そしてまた翌日も、気持ちよく走る。

こうすれば、精神的にとても良い循環が表れると思います。


精神論ばかりではなく、実際に体内の循環が良くなったのは、言うまでもありません。

ジョギング前に比べて、体の調子は格段に良くなりました


僕が体験しているメリット、デメリットを挙げてみます。
※計測などしたわけではなく、主に個人的な感想です。

【メリット】

  • 体内の循環、代謝が明らかによくなった。体の調子が全体的に上がり、シャキッとする。
  • 足腰が軽くなった、足腰の筋力が上がった。
  • 日光や継続的運動によってセロトニンが分泌され(※想像)、多幸感、覚醒感などが得られる
  • 免疫力が高まると言われている(コロナ感染予防に重要だと思います)。
  • 背筋が伸びるようになった(背を伸ばして走る姿勢に矯正効果があるためか)。
  • 心肺機能が向上した(普段の呼吸も楽になった)。
  • 体重が減った。(僕の場合ですが)3か月で3kg減って、お腹が少しへっこんできました。※当然個人差があると思います。
  • (継続した場合)季節の変化を感じ取れる。五感が冴える
  • 朝走ると、その日1日の良いスタートが切れる。生活にメリハリがつく
  • だらだら続く毎日ではなく、1日1日をしっかり過ごせる
  • ウェアやシューズ代など以外は、トレーニングとしてお金がかからない


【デメリット】

  • 1~2時間の時間を要する
    忙しい時には、走る時間帯を変える、距離を短くする、ジョギングを休みにするなどの対応が必要(しかし、どんなトレーニングにも時間は必要です)。
  • 汗をかくと洗濯物が増える(何の運動でも同じことですね:笑)。

※つまり、デメリットはあまり思いつきません (^^)


【その他の特徴】

  • 天気に敏感になる(走れるかどうかを気にするようになります:笑)


まあ一言で言うと、メリットばかりです。

 

しかし、ダイエットの観点から言うと、ただむやみに体重減少を目指すのではなく、しっかりと筋肉を付けていくことが結果的に燃焼しやすい体につながるため、大事なようです。


まずやり始める。細かいことは後から考える。

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ジョギングを始めて、そして継続して、僕は体調の改善以外にも大きな財産を得ました。

それは、「まずやってみる」という行動の効果です。


考えていても結局は取り組まない、時間だけが過ぎていくということは、一般によくあると思います。

現に僕は、「走れたらいいなあ」と思っているだけで何もせず、4年近くが過ぎ去りました (^^;)


失われた時間、そして情熱が、戻ってくることはありません。
だから、まずスタートするのです。


極論をいえば、コスチュームも技術も、最初はどうでもいいんです。
有り合わせのものでいいのです。
我流でいいのです。


まずやり始めてしまう。それから考える。
どうしても自分に合わなかったら、やめればいいのです。


実際に、砧(きぬた)公園の周回コースには、たまにGパンと普通の靴で走っている人もいます。

きっとその人は、突然走りたくなったのでしょう。
だから走った。
それでよいのです。
格好などどうでもよいのです。


その行動力こそが、僕には必要でした。


考えている間に機を逃してしまう。
これは、ビジネスにも言えると思います。


ジョギングで得たエッセンスを、僕は少しでも普段の仕事や生活にも反映させるべく、日々トライしています。


「まずはやってしまう」というスタンスです。
これは、年齢に関係ありません。


ジョギングについては、もっと多くのことを書こうと思っていましたが、ことのほか長くなってしまったので、続編に持ち越します。

 


 

僕がジョギングを始めたとき、6か月目、9か月目、1年目の様子はこちらです。

それぞれの時期に、それぞれのドラマがあります。

是非ご覧ください!

www.wakaru-log.com

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ではまた次回!

 

 



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