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宇宙からの帰還|NASA宇宙飛行士の驚くべき心理的体験

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出発の朝

午前4:30
アメリカ・フロリダ州東海岸。


男たちは起床すると、医務室に行って身体検査を受けた。
ステーキとスクランブルエッグの朝食をとる。


その後、再び身体検査をする。
脈、血圧、呼吸などを測るため、胸や腹にセンサーを付けられる。
採尿器をつけ、専用の下着をつけ、そして、宇宙服を着る


午前6:30
サターンV型ロケットの発射台に到着する。
エレベーターで360フィート(約110m)の高さまで昇り、ロケット最上部近くの司令船に乗り込む。


午前7:00
司令船のハッチが閉まる。


午前9:00
ロケットが点火され、火を吹き始める。
すさまじい轟音とともに、ロケットは猛烈な速度で上昇を始める。
4Gの加速度で、乗組員たちは座席に押し付けられる。


600トンのケロシン燃料と1,400トンの液体酸素をわずか2分半で燃焼して、時速8,500kmになる。

2段目、3段目の燃料が燃やされた後には、時速39,000km(秒速10km)のスピードに達している。


ロケットは慣性の法則に従い、秒速10kmで月へ飛んで行く。

 

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これは、かつて1961~1972年のころに実施された、NASAのアポロ計画の風景だ。

初期の宇宙飛行士たちは、ほとんどが軍関係者やパイロット、科学者などから選ばれていた。


ある飛行士は、自分たちのことを

“nuts and bolts type”
「ボルトとナット型」

と呼ぶほど、メカニカルなことにしか関心がない技術者集団だった。


彼らが、文化や政治経済などの話題を話すことはなく、そのような話題は、口に出すことすらはばかれる空気だったという。

地球に帰って来ても、宇宙飛行の精神的な面については語る機会もなく、仲間同士で話すこともなく、

そうした記録もほとんど残っていなかった。

 

しかし、実は

 

彼らのうちの何人かは、宇宙飛行を通じて
人生を根底から変えてしまうほどの衝撃を受けていた。


例えば、

地球の軌道上から地球の姿を見たとき。

月へ向かう途中で、遠ざかっていく小さな地球を見たとき。

自分が月の上に降り立ったとき。


彼らは、言葉では言い表せないほどの、大きな内的インパクトを経験をしていたのだった。

 

f:id:wakaru-web:20200508214018j:plain月へ行ったアポロ11号のクルー
Wikimedia Commons

 

宇宙からの帰還

宇宙から帰還した飛行士たちの心理的体験。
これは、立花隆(たちばな・たかし) 氏の著書「宇宙からの帰還」に書かれています。


立花隆氏は、1940年生まれのジャーナリスト。

「田中角栄研究」他、社会に影響を与えた多くの著書があります。
「宇宙からの帰還」は、1983年に刊行されたノンフィクション作品です。

 スペースシャトルが登場する以前の時代。
マーキュリー計画、ジェミニ計画、アポロ計画のころの宇宙飛行士たちを訪ね、膨大な取材を行って書かれた作品です。


※当記事には、特定の宗教や至高の存在などの感覚を、共感あるいは否定する特別な意図がないことを、あらかじめお伝えしておきます。

 

 

多忙を極める訓練の日々

宇宙飛行士に課された学習や訓練は、とてつもなく膨大です。

 

勉強する内容は・・・

天文学、航空工学、航空力学、ロケット推進、コンピューター、通信工学、数学、地理、高層大気圏物理学、宇宙空間物理学、環境制御、医学、気象学、誘導制御、宇宙航法、地質学、岩石学、鉱物学

・・・などなど。

これ以上の範囲があるうえに、それぞれの課目を何10時間も学ばなければなりませんでした。

 

中でも変わった訓練として、「サバイバル訓練」がありました。

地球に帰還したとき、場合によっては宇宙船が予定地点に着水できず、ジャングルの中や沙漠地帯に落ちるかもしれない。

そのとき、ジャングルの中でどうやって食料を見つけるか、危険に対応するか。

救出隊が到着するまでの生き延び方を、学びました。


実際に、本物のジャングルや砂漠に行ってサバイバル実習まで行ったといいます。

 

f:id:wakaru-web:20200509090839j:plain宇宙飛行士のサバイバル訓練
Wikimedia Commons


このような学習や訓練に加えて、宇宙計画のPR集会などにも出席するため、宇宙飛行士たちは全米を駆け巡らなければならず、多忙を極めました。


家庭を顧みる余裕もありません。


そのため、なんと彼らにはT38ジェット練習機が「自家用機」として与えられていたそうです。

自家用ジェット機で全米を移動していたのです!

 

本番そっくりのシミュレーション

月への飛行に関しては合計、3,000時間にもおよぶシミュレーション訓練がありました。

打ち上げ、宇宙飛行、月着陸、そして地球への帰還まで。

シミュレーションは、本番と全く変わらないほどの驚くべき正確さで再現されていました。


例えば、本物の月面そっくりの緻密なレリーフ模型が作られ

操縦装置と連動して、テレビカメラが模型を映していくという仕掛けになっていました。

シミュレーターの窓には、本番と同じような光景が見え、乗っているときの震動や轟音までも再現されていたようです。

 

だから、宇宙飛行士たちは本当に月に行った時にこう思ったそうです。

これはシミュレーションとそっくりだ


宇宙飛行の一番の目的は、人間が宇宙や月へ行って無事に地球に帰ってくることです。

そのために、何重もの安全策やトラブルへの対策が考え抜かれていたのです。

 

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宇宙飛行士のシミュレーション訓練
Wikimedia Commons

f:id:wakaru-web:20200509120323j:plain月面活動のシミュレーション訓練
Wikimedia Commons

突如訪れる空白の時間

本番の宇宙飛行の間も飛行士たちは、目が回るほどの忙しさです。


ヒューストンからの指示を受けながら、準備や点検など、「分刻み」で組まれたスケジュールをこなしていきます。

常に技術的なタスクに追われていて、何か考えたり感じたりしている余裕は全くありません。

 

f:id:wakaru-web:20200509115038j:plainWikimedia Commons

 

しかし、そんな過密な時間に、
突如として「空白」ができることがありました。

 

例えば、次のような瞬間です。

船外活動中にふと待ち時間ができて、一人ポツンと宇宙空間に浮いているとき

あるいは、月への飛行中に膨大な点検作業を終えて、ようやく一息ついて窓の外を見たとき


そうした時に彼らは「初めて」、

広大な宇宙やそこに浮かぶ地球の姿を、目の当たりにすることができたのです。

 

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奇跡の5分

「地球は青かった」


人類史上初めて宇宙空間に出た旧ソ連のユーリ・ガガーリンの言葉は、あまりにも有名です。

宇宙に浮かぶ地球の美しさが、宇宙飛行士に大きなショックを与えました。

しかし、宇宙飛行士が受けたインパクトは、これだけではありませんでした。

 

 アポロ9号の宇宙飛行士だったラッセル・シュワイカートは、こう語ります。

「地球軌道周回で月着陸船から船外に出て、
手すりを伝って司令船に移動できるかどうか、という実験をしていた。


いよいよ実験開始というときになって、なぜか記録用のカメラが故障した。
仕方なく、仲間が司令船に戻ってカメラの調整を始めた。


それからカメラが直るまでの間、私はたった一人で何もすることがなく、宇宙空間に取り残された。


それは、時間にしてわずか5分くらいのことでしかなかった。

しかし、その5分間が、私にとっては人生において最も充実した5分となった」


彼はいったい、その5分間で何を感じたのでしょうか。

 

f:id:wakaru-web:20200509115636j:plainアポロ9号の宇宙飛行士ラッセル・シュワイカート
Wikimedia Commons

 

宇宙と地球と自分

宇宙で浮いていたシュワイカートが見下ろすと、眼下に地球がありました。


宇宙服のヘルメットの視界を遮るものは何もなく、漆黒の宇宙とあまりにも美しい地球

地球軌道を周回中で、時速17,000マイル(27,000km)の超高速で飛んでいるはずなのに、そのスピードを実感させるものは何もない。

完全な静寂が支配している。

 

宇宙空間の真っ只中に、ただ自分がポツンと浮いているだけです。


シュワイカートは、その5分間に思いを巡らせました。
こんなチャンスは、二度とないことを知っていました。

 
「おまえ(自分)はなぜここにいるのか」

「おまえが見ているものは何なのか」

「おまえと世界はどう関係しているのか」

 

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そして、漆黒の宇宙と地球と、それを見下ろしている自分を感じて、こう思ったそうです。


「おこがましい言い方になるかもしれないが、

人間という「種」を代表して自分がそこにいると思った。

自分は、人間という種のセンサーになっていた。
感覚器官にすぎなかった。

 
「種」というものをこれほど強烈に意識したのは、初めてだった。


それは、最高にハイな瞬間だった。
しかし、通常よくある、エゴが高揚するハイではなくて、
エゴが消失するハイだった。


この体験は、私の個人的な価値ではなく、
私が人類に対して持ち帰って伝えるべき価値だと感じた」


そして、こう続けます。


「人間と地球との関係を、もっと深く考えなければいけない。


人間同士のことだけではなく、人間という種と他の種との関係
人間という種と地球との関係を、もっと考えなければならない。


(当時)眼下の地球では、第三次中東戦争が行われているが、
人間同士が殺し合うより前に、もっとしなければならないことがある」

 

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神と呼ぶ「何か」

他の何人かの宇宙飛行士も、「宇宙空間でとてつもないインパクトを感じた」と、取材した立花氏に証言しています。


多くの飛行士が共通して語ったのは「」の存在です。


アメリカ人がクリスチャンであることは、何ら特殊なことではありません。

しかし、宇宙飛行士たちがみな敬虔なクリスチャンだったかというと、必ずしもそうではありませんでした。

「神」の存在に疑問を持っていた者も、少なからずいました。
(社会的な影響を考えて、表には出さなかったようですが)

 

しかし、

彼らが宇宙に浮かぶ地球を見たとき

荒涼とした月面を肉眼で見たとき

月の上を移動しているとき

 

つまり、宇宙空間を体感した時

神がここにいると確信した」と言うのです。

 

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それは、白い衣を着て髭をたくわえ、杖をついた神がいるのではなく、姿はないが確実に存在感のある神。


自分と神の距離が、

まるで同空間にいるかのように、
まるで隣にいるかのように身近になって

振り向くとそこに「神」がいるに違いない、という感覚にとらわれたそうです。

実際に、何度も振り返って後を確認した者もいました。

 

いったいこれは、どういうことなのでしょうか?

 

飛行士によっては、「神」というよりもこの世界を創った「至高の存在」を感じた、と言いう者もいます。

この調和のとれた世界を創造した存在が、あるに違いない。

なければおかしい。

今自分が見ているもの、宇宙や地球の調和は、その存在が作った世界だと感じた、というのです。


特徴的なのは、自分自身がこのように「神」や「至高の存在」の確信を得ることになるとは、夢にも思ってもみなかったと語る者が多かったことです。

 

宇宙体験とは、それだけ人類の経験を超えた体験だったのでしょう。

 

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著者の立花氏は、深く言及していませんが、信仰の深さにかかわらず「飛行士たちがクリスチャンである」という下地は、きっと、こうした経験に影響を与えたに違いないでしょう。

 
もしアジアで生まれ育って、クリスチャンではない人間が同じ体験をしたとしたら、アメリカ人と同じように感じたでしょうか。

また別の感じ方、受け取り方で「神」や「至高の存在」以外の感覚を抱いたかもしれませんね。

 
そうした体験談があれば、是非読んでみたいものです。 

 

宇宙飛行士たちの後の人生

宇宙体験で内的なインパクトを受けた飛行士の多くには、その後、NASAをやめて様々な転身・変化を遂げたケースがあります。

 

例えば、

  • 宇宙で神の存在を確信して伝導者になった者
  • ESP能力(いわゆる超能力)の研究科になった者
  • 上院議員になった者
  • 絵描きになって、月世界ばかりを描いている者
  • ビジネスに転身して大成功をおさめた者

中には、精神に異常をきたした者もいたようです。


宇宙体験をすると、前と同じ人間ではありえない

シュワイカートのこの言葉の通り

形はどうであれ、いずれも宇宙飛行の前よりも広い視野を得て世界を見るようになり、それまでの自分になかった新しいビジョンを手に入れた者たちが、多かったようです。

 

未来の人類の先駆け

シュワイカートは語ります。

「宇宙から地球を見たとき、私の受けた精神的インパクトは、
まるで、人間の体内にいたバクテリアが体外に出てはじめて
人間の姿全体を知ったときに受けるであろうようなインパクトだったのだ」


彼の言葉の通り、宇宙での精神的な体験は、人間の視野を広げて次の進化を遂げる先駆けになるものなのかもしれません。

 

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人類はこれから、成功と失敗を繰り返して少しずつ、宇宙に出ていく。


やがて未来の時代、宇宙や他の惑星に住むようになったとしたら

現在の価値観や常識をはるかに超えた意識を持つ「種」になるのかも知れませんね。

 

いや、あるいはそうではなく、
今後どこに行こうとも、人類はさして変わらないでしょうか?

これまでの人類の歴史を見てみると、その可能性も大いにあるように思えます。


願わくば、今よりも広く深い知見を持って、
宇宙に出てまでも今と同じような争いや奪い合いが続かない「種」になれることを、祈るばかりです。


そしてそれは、現在の私たちの歩み方次第でもありますね。

 

 

 ではまた次回!

 

 

(当記事は、立花隆氏の著書「宇宙からの帰還」から 抜粋・引用・加工しています)

 

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