口を開けるの?それとも閉じるの?
歯医者さんの診察台で、
僕は、歯科衛生士さんの指示を待っていました。
今日は、虫歯治療ではなく、歯を磨く日だということです。
歯科衛生士さん「はい、ではまず表面をきれいにしていきます」
僕「はい」
専用の機器が、閉じかけた口にぶつかりました。
歯科衛生士さん「あ、ごめんなさい」
僕「(あ、今、口を開けるタイミングだったんだ:心の声)」
僕は口を開けます。
歯科衛生士さんは、機器を口の中に入れて、歯を磨きます。
ウィーン!
その後、機器を口からはずして、何か他の道具を用意しています。
僕「(ん?いったん終わったのかな?口を閉じていいのかな?)」
口を閉じます。
歯科衛生士さんは、別な器具を持って来ました。
歯科衛生士さん「では、さっきより細かいので磨いていきます」
そう言ったあと、歯科衛生士さんは待っています。
僕「・・・(ん、待ってるの?今、口を開けるの?)」
そう察して口を開けました。
歯科衛生士さんは、何も言わずに装置を口に入れて、磨き始めます。
僕「・・・(やっぱり、開けるんだったのね)」
磨く作業は続きます。
モヤモヤとした気持ちが沸き起こってきます。
僕「(いつ口を開けるのか、閉じるのか、何をすべきなのか、わからないですよ?)」
歯科衛生士さんは装置を口から出し、片付けています。
僕「・・・(え?終わったの?)」
長い間口を開けたままで疲れてきます。
歯科衛生士さんは何も言いません。
僕「(口を)ゆすいでいいんですか?」
歯科衛生士さん「はい、いいですよ。あ、(座席を)起こしますね」
何事もないような言い方で、歯科衛生士さんは言います。
僕は、体を起こして口をゆすぎました。
その後、たまに「口を開けてください」という指示が出るものの、
「では、さっきより硬いのでやります」とか
「最後に細かいので磨きます」とか、
出る言葉はそういうことばかりです。
でもそれは、歯科衛生士さん自身の段取りの確認です。
いわば、本人が指差し確認しているようなもので、こちらがそれを聞いても、何をできるわけでもありません。
「今は患者にとってピンとこない情報」です。
僕「はあ・・・」こちらが答えられるのは、それだけです。
そしてあるとき、歯科衛生士さんが歯を磨いている途中で、器具の端が歯茎に当たって痛かったので
「痛っ!」と言いました。
「あ、すみません!」
そういって、そのまま作業を続けます。
歯茎に当たったことには、気づいていないようです。
僕「(え?今、どうして痛かったのか、確認しないの?
これでは、再び同じことが起こるのではないの?)」
不安になりました。
こちらは、口を開けたままだし、磨いているので、いちいち止めて訴えるわけにもいきません。
結局、不安とモヤモヤのまま、僕からは何も伝えないまま、歯みがき作業は終わりました。
これは細かいことですか?
果たして、僕は細かいことを気にしすぎていたのでしょうか?
神経質になっていたのでしょうか?
いえ、そうは思えませんでした。
その歯医者さんにはもう1年も通っていて、信頼しています。
でも、歯科衛生士さんはよく辞めたり代わったりするので、だいたいいつも違う人が担当してくれます。
人によって技量が違うことは、仕方ありません。
しかし・・・
患者が聞きたいのは、今からどんなことをするのか。
いつ口を開けるのか、閉じるのか。
ずっと口を開けていると疲れてくるので、一度閉じて休んでもいいのか。
そういう、具体的なことです。
相手の状況を想像して伝える人、そうでない人
この日の歯科衛生士さんは、患者に何を伝えるべきなのかが、おそらくわかっていない人だったと思います。
逆に、患者の目線に立って指示を出せる歯科衛生士さんも、います。
「開けてください」
「はい、いったん楽にして」
「閉じてください」
「ちょっと熱いのが入ります」
そのときに患者が知りたいことを、端的に伝えてくれます。
こちらは、何の心配もなく、任せられます。
この二者の違いは、明らかだと思います。
相手の立場に立っているか、そうでないかです。
本来相手の立場に立つことなど不可能
「相手の立場に立つ」
これは良く言われるフレーズですが、厳密な意味ではそれは不可能でしょう。
なぜなら、相手の状態や気持ちになることは、不可能だと思うからです。
相手と自分は違います。
生まれも違えば育ちも違い、過ごしてきた歴史も違います。
だから、感じることも、考えることも、当然違います。
その違う相手に自分が「なる」などと言うことがあれば、それは勘違いか思い上がりというものでしょう。
でも、ここでは「相手の状態を想像して話す」という意味で使います。
別な人間であっても、相手の状態を「想像」したり状況を「仮定」したりすることは、できるでしょう。
相手が今、何をどこまで知っていて、これを話したらどう考えるだろうか、感じるだろうか。
どう表現したら、この質問が伝わるだろうか。
これらの想像は的外れなこともありますが、全く想像せずに話すのと、想像しようとして話すのでは、全く違う結果になるでしょう。
そう思いませんか?
爺さんになるまで、フィードバックは続く
歯医者さんでの出来事で、僕は自分にそれができているかどうか、置き換えて考えてみました。
仕事で、相手(顧客、取引先の人、上司)の立場を想像して、「相手にわかる内容を、わかる言葉で」話しているか。
友人に、「その友人の理解しやすい表現」で話しているか。
小さな子供に質問されたとき、「その子が理解できる範囲の知識で」答えているか。
誰かに質問するとき、「回答者が答えやすい形で」質問をしているか。
僕は、回答すべき答えをたとえ「半分しか述べられなかった」としても、その半分が「相手にわかる表現」であることの方が、「全て答えた」けどほとんど伝わらなかったときよりも、数段重要だと思います。
そして、おおよそ自分に点数をつけるとすれば、100点満点で40点かな、と思いました。
一層注意して伝えることが重要だな、と思うばかりです。
(きっとこうしたスキルが完成することはないので、おそらく爺さんになっても同じように考えて、現実からのフィードバックを続けているかもしれません)
歯医者さんに行く頻度
ところでみなさんは、歯医者さんにどのくらいの頻度で行っていますか?
3ヶ月に1回?
1年に1回?
治療のためだけではなく、予防のために行っている人もいるでしょう。
実は僕は、この20年近く、歯医者さんにかかってきませんでした。
もう一度言います。
20年近くです。
すごく長い期間ですよね?
なぜそんなに長い間放っておいたかというと、ずっと歯が痛くなかったからです。
人間、痛くなかったら歯医者さんには行きませんよね?
歯医者さんでは歯を削ったりするので、治療は痛いです(あ、実際には痛かったら麻酔をかけるので、子供時代からの僕のイメージです)。
削る音も怖いし、あの消毒薬系のにおいが、恐怖を誘います。
だから、(僕は)自ら進んで歯医者さんには行きません。
それでも、20年ぶりぐらいに行った理由は、歯をキレイにしたかったからです。
僕は、以前かなりの量タバコ(セブンスターを1日30本程度)を吸っていましたが、かなり前にやめました。
それでも、歯が着色して汚れてきたためです。
それで、歯医者さんの扉を叩いたのですが、
そこから、1年間通うハメになりました。
歯のクリーニングから、虫歯の治療に移行したためです。
(もう数えていませんが)虫歯が全部で8箇所ぐらいあったと思います。
痛くないのに・・・
週1回通って、削っては翌週に詰めて、削っては詰めて・・・
気づいたら、1年経ちました。
かなり痛い思いもしました(気持ちがではなく、実際に歯の神経が)(;^_^A
途中で何度か思いました。
「ああ、もうやめようか」
「ここでいったんストップして、またしばらくしたら再開しようか」
でも、文字通り歯を食いしばって、通い続けました。
実は、以前聞いた知人の歯の治療の話を、何度か思い出したからです。
治療を途中でやめてはならない、長期間放置してはならない
その人は、やはり相当虫歯があったそうで、歯医者で治療をして、マメに通っていたそうです。
家に帰っても、それまでのいい加減な歯みがきを改めて、丁寧に磨いていたそうです。
ところがあるとき、気持ちの糸がぷっつりと切れて、歯医者さんに行かなくなってしまった。
そして、長期間放置した結果・・・
まだ治療できていない歯が、神経ごと根こそぎダメになり、ついにはインプラントを入れなければならなくなってしまいました!
結局、総工費(笑)100万円近くかかったそうです。
そして、治療の行程は、かなり辛かったそうです。
その人は言っていました「ああ、多少大変でも、面倒でも、最初の段階でやめずに通い続けていればよかった。結局、お金も労力も、何倍もかかってしまいましたよ」と。
普段からよく磨き、定期的に検診に行って、歯を綺麗にしながら悪いところを見つけ、できるだけ早めに治していく。
歯科は予防の時代、ですよね。
なんて偉そうなこと、僕は全く言えませんが!(*^o^*)
ではまた次回!
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